4月に緊急事態宣言が発出された当初は手探りで行っていたオンラインでのコミュニケーションも、次第に活用が進み、慣れてきた頃ではないでしょうか。一方、いろいろな業界の営業部門の方から相談を受ける中で、オンライン営業がうまくいっているケースとそうでないケースに明暗が分かれていることに気づきます。オンライン営業を成功させるためのプロセスから、その原因を探っていきましょう。(リクルートマネジメントソリューションズ シニアコンサルタント 松木知徳)
オンライン営業を成功させるプロセス
「知る」「選ぶ」「使いこなす」
オンライン営業の巧拙を分けるポイントは、「(1)知る」「(2)選ぶ」「(3)使いこなす」の3つのプロセスに大別できます。第一の「知る」のフェーズでは、訪問での面会(オフライン)とビデオ会議(オンライン)など顧客にアプローチする営業手法のメリット、デメリット、そしてその違いを理解することが重要になります。第二の「選ぶ」のフェーズでは、営業手法のオンラインとオフラインの使い分けについて戦略の方針を定める必要があります。そして、第三の「使いこなす」フェーズでは、これらの手法を使いこなすスキルや仕組みを整えなければなりません。
この3つのプロセスを押さえながら、オンライン営業の課題を明らかにして、対策を行っていきましょう。
(1)知る:3つのコミュニケーション手段の特性を理解する
まず「知る」フェーズとして、営業におけるコミュニケーション手段の特性を理解します。手段は主に、実際にお客さまを訪問する「対面でのアポイント(対面アポ)」、テキストベースでやりとりをする「メール、SNSでの連絡」、そしてビデオ会議システムや電話を使って話す「オンライン・電話アポ」の3つに分けられます。
<対面アポ>
対面アポのメリットは、何といっても情報量です。ここでの情報には発言内容だけでなく、声のトーンや視線、表情などを含みます(*1)。こちらの熱意を伝えることや、相手の反応や場の雰囲気から提案に対する納得感を推し量ることもできます。機密性の高い情報やクレームなど感情的な対応が必要な場面など、状況を見ながら臨機応変に対応する必要がある場面には適しています。顧客にとっても、重要な意思決定の場面など、細部の確認や取引する相手の人となりを知るとともに、オフィシャルには共有しづらい情報や悩みをそっと伝えることができます。
一方でデメリットは、移動に要する時間・経費のコストです。ある法人営業の組織を例に挙げれば、1件のアポにかかる移動時間が1時間として、1日2件のアポに行ったとすると、合計の移動時間は1カ月(20営業日で計算)で40時間、1年では480時間にもなります。交通費や出張費も積み重なると大きなコストになります。
(*1)大坊郁夫(1998)『しぐさのコミュニケーション-人は親しみをどう伝え合うかー』サイエンス社