VUCA時代に強い営業組織に
必要な8つの条件

――強い営業組織を作るためには、具体的にどのようなことがカギになりますか?

 強い営業組織には、8つの風土が必要です(図参照)。

強い営業組織の条件(c)リクルートマネジメントソリューションズ 禁無断転載
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 強い営業組織の柱になるのは、図の真ん中にある共通の目標やビジョンという「目的の共有」と、何でも言い合える「場の安心・信頼」で、これは昔から強いチームの条件でした。共通の目的がないとチームである必要はないですし、安心してものが言えなければチームとしての相互作用が生まれません。

 さらに、以前から営業組織は、図の左側にある「業績の追求」「やり抜く意欲」「個人の成長の追求」が重視されてきました。しかし、これだけでは今のマーケットに対応できなくなってきています。

 そんな中で重要視されているのが、図の右側にある「顧客価値の追求」「変革への意欲」「組織の成長の追求」です。だからと言って、左の重要性が下がったというわけではありません。今は左右どちらも重要になってきており、今、業績を上げている組織は、背骨を中心にこの8つのバランスが取れているのです。

 例えば、過去の踏襲が正解だった時代は、何を行うことが目標達成につながるかは明確であり、それを「やり抜く」ことで業績を上げてきました。目標達成の先行指標であるKPIを疑う余地はなく、KPIマネジメント=やり抜くマネジメントでよかったのです。しかし、VUCAのマーケットではそれは必ずしも正解ではありません。

 昨今の新型コロナ対応のように感染者数、重症者数、陽性率……、コロナの抑制と経済の両立というゴールの実現に向けて、何をKPIにすることが正解なのかが、明らかではありません。一方で、決めたことが正解かどうかは、ある程度「やり抜く」ことが出来ないと明らかになりません。つまり、正解が分からない中でも方向性を決め、組織一丸となって「やり抜くこと」と状況に応じて柔軟に「変革すること」を両立できる組織能力が必要になります。

 また、これまでは個人間競争による競争心でモチベーションを喚起してきた営業組織が多く見られました。新たなアイデアや価値の創造よりも、愚直にやり抜くことが求められるマーケットでは、この方法はある意味効果的でした。一方で、この風土はナレッジの囲い込みや、一匹狼集団となりやすい弊害があります。新たなアイデアや価値の創造は一匹狼集団では限界があり、チームでアイデアを出し合ったり、成功事例や失敗事例を組織で横展開したり、学び合う組織づくりが必要になってきます。そのためには、ナレッジをシェアする人がたたえられたり、助け合えたりする文化を作って組織全体で成長することが大切です。

 昨今の激しい環境変化において、この左右を両立していくためには、前述の「自律・共創型」の組織づくりがとても大切になります。一方で、その実現には旧来型のマネジメントからのパラダイム転換が必要であり、決して簡単なことではありません。だからこそ、これらをマネジャー任せにするのではなく、会社全体で仕組みを構築し、経営トップが意思を持って語り続け、人事・評価制度なども連動していく必要があります。そして、マネジメント層の意識変革やスキル習得をサポートする施策が不可欠でしょう。