実際、坐骨神経痛患者の中には、発症から数週間以内に特別な介入を行わなくても症状が改善する患者がいる一方で、痛みが続く患者もいる。今回の臨床試験では、1年後に症状が「大幅に改善した」と回答した患者の割合は、対照群の27.6%に対して、早期PT群では45.2%と高かった。しかし、この結果は、早期にPTによる介入を行っても、過半数の患者で症状が大幅には改善しなかったと見ることもできる。ただ、Fritz氏によれば、どのような患者に早期PTが有効なのかを予測する方法は今のところないという。
一方、今回の研究には関与していない、米ニューヨーク大学ランゴン整形外科センターのSalvador Portugal氏は、「坐骨神経痛の原因は患者によってさまざまであり、身体的な要因ではなく、心理的な要因が関与している場合もある」と指摘。また、抑うつや不安を抱える患者や痛みを大げさに捉えがちな患者は、体を動かすことに恐れを抱きやすく、痛みが持続するリスクが高くなる可能性もあるという。同氏は、「患者の中には、身体活動により痛みが増すのではないかと不安になる人もいる。しかし、実際はその逆であり、活動レベルは維持した方が良い」と話している。
とはいえ、PTを始めるには痛みが強過ぎるため、運動を行える状態になるまで鎮痛薬の使用が必要な患者もいる。Portugal氏もFritz氏と同様に、全ての坐骨神経痛患者に有効な治療法は存在しないとし、今回の臨床試験では“管理された方法”で身体活動を維持することの有用性が示されたとの見解を示している。(HealthDay News 2020年10月5日)
Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.