「習得目標」を分解して
オンラインで可能な学習活動を考える
例えば、「お客様が訴えている問題に共感を示しながら、解決策を導き出すことができる」という難易度の高い顧客対応スキルの習得が目標とされている研修があったとしましょう。目標とされているのは対人スキルの領域なので、人とのやり取りやフィードバックが必要です。その業務のプロセスを模することができるため「ロールプレー」といった学習アクティビティーがよく使われます。
しかし、この目標を分解してみると、
(1)お客様の訴えを整理して問題を分析・特定することができる力
(2)問題の種類による解決策を提示するための事例の知識
(3)傾聴のスキル
といったことも「共感を示して、解決策へと導く」前に必要な学習要素であることが分かります。
(1)と(2)は、リアルタイムではなく、オンデマンド動画やe-ラーニング、事例の分析課題提出、ソーシャルネットワーク機能を使ったフィードバックやディスカッションでもできそうです。「傾聴のスキル」や「共感」には、実践演習でのフィードバックが必要なので、リアルタイムオンライン研修の工夫が必要だと考えられます。
ブレイクアウトルーム機能などのグループアクティビティーツールを使って、何を基準として何を評価することが傾聴や共感ができていることになるのかのチェックリストを持って評価する人、お客様役、カスタマーサービス役の3人一組でのロールプレーなどもできます。
オンライン研修は、集合研修以上に脳への疲労が大きいことやオンライン環境での集中力の限界が90分程度であると言われています。そう考えると、何をリアルタイムオンライン研修にすべきか、集合研修を置き換えるという発想ではなく、習得目標を基盤に考える必要があるのではないでしょうか。その上で、絶対に集合研修でなければならないものは何かを特定することで、その効果も高めることができるでしょう。
今年は「オンラインラーニング元年」とも言える状況かもしれませんが、ラーニングに変革をもたらし、企業研修の在り方から組織のラーニング行動へ変化をもたらす意味でもよいチャンスとしていきたいですね。
(ATDジャパン理事、インストラクショナルデザイン代表取締役 中原孝子)