「ムダ排除の思想」を学び取ったビル・ゲイツ
「経営におけるあらゆる《ムダ》は最終的に《時間》に集約される」といち早く指摘したのは本田宗一郎(1906~1991)だった。大野も同じ考えで、デルもゲイツもそこに着目した。
「情報を時間と取り引きすること。すべての供給業者、提携業者とデジタル取引を使ってサイクルタイムを減らすこと。同様に、すべてのビジネス・プロセスを『ジャスト・イン・タイムのかんばん方式』に転換すること」(『思考スピードの経営』日本経済新聞社、1999年)
ビル・ゲイツは、「かんばん方式」から「情報」と「時間」の深い関係を読みとり、「時間のムダ排除」を徹底した。
最大の成果は「顧客の発見」と「インダストリーの発見」
「トヨタ生産方式の二本柱である『ジャスト・イン・タイム』は豊田喜一郎氏(トヨタ自動車創業者、1894~1952)から教わり、『ニンベンのある自働化』は豊田佐吉翁(発明王、1867~1930)からヒントを得ました」と大野は言い切った。
先人たちは絶えず「情報」を追求し、「情報の価値」を把握した事実を大野は確認した。「トヨタ生産方式」には「トヨタ情報システム」が表裏一体として組み込まれていることを大野は繰り返し強調した。
大野耐一の絶え間ない未知への挑戦を通じて最も手応えのあった成果は、次の言葉に集約される。
「トヨタ生産方式の発想の原点は『徹底したムダの排除』にあったが、実は、その目標に迫っていけばいくほど、『大衆』などという抽象的な塊ではなく、むしろ一人一人、「個性の違ったお客さんの人間像」が鮮明に見えてきて、それら一人一人の注文を受けて一つ一つ異なる品物をつくっていくのが、『本来のインダストリーの姿』であることを発見した。同じものをできるだけたくさんまとめて造ろうとする『フォード・システム』は、そこにあらゆる種類のムダを発生させる。そして結局は、コストが高くつく。一つ一つ違うものをていねいに造る『トヨタ生産方式』のほうがはるかにコストは安い」
◆大野耐一生誕100年記念フォーラムのお知らせ◆
トヨタ生産方式の基礎を築いた故大野耐一氏が、今年で生誕100年を迎えるのを記念して、21世紀「ものづくり思想」の探求をテーマとしたフォーラムが開催されます。
日 時|2012年10月15日(月)午後1時~3時30分(開場12時)
会 場|ホテルグランドパレス 「ダイヤモンド」ルーム
参加費|10,000円(税込)
◆ダイヤモンド社のロングセラーのご紹介◆
トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして
大野耐一著、B6判上製、248頁、定価(本体1400円+税)
30年以上も読み継がれる世界的な経営バイブル!
トヨタ生産方式の真髄とは、日本の土着の思想をベースにして生まれ、欧米ですでに確立していた自動車工業の大量生産に対抗し生き残るため、永年にわたって試行錯誤を繰り返した末に、何とか目途のついた生産方式ならびに生産管理方式である。
この純粋に日本オリジナルの生産システムをまとめあげたプロデューサーこそ、本書の著者大野耐一である。
1912年(明治45年)生まれの著者は、新しい経営思想を構想し、構築し、それを実践する指導力を備えた、たぐいまれなる産業人であった。
1978年に弊社から刊行された本書『トヨタ生産方式』は、2012年現在109刷を数える。経営書は流行り廃りの激しい生ものであるだけに、刷数が三桁に達するものは他にほとんど例をみない。この事実こそ、本書が世界的な経営のバイブルとして長く読み継がれてきた証である。
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