幻の30兆円上場、アリペイの真実#5Photo:VCG/gettyimages

世界最強のフィンテック企業であるアント・グループの、これまでにない画期的なサービスを生み出すテクノロジーとは。特集『幻の30兆円上場、アリペイの真実』(全5回)の最終回では、アント・グループの最新サービス、驚異のテクノロジーを探った。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)

1億人が加入した驚異の保険商品
相互宝の狙いとは

 発売からわずか1年で1億人が加入した、驚異の保険商品。それがアント・グループのインターネット互助プラン「相互宝」だ。2018年10月の発表から1年で加入者の1億人突破が発表された。その勢いはまだまだ続いている。アント・グループは25年に相互宝を筆頭とするネット互助プランの加入者数が4億5000万人に達すると予測している。

 相互宝とはいったいどのような保険商品なのか。ネット互助プランとはいわゆるP2P保険(ピア・ツー・ピア保険、保険会社ではなく加入者が割り勘で保険金を支払う保険)の類似サービスで、対象となる疾病を発症した人に対して一時金が支払われ、その総額を加入者が毎月割り勘で負担するという仕組みになっている。一時金受給者が多ければ多いほど掛け金は上がるが、最大でも年188元(約3010円)を超えないことが約束されている。実際の負担額は規定よりもさらに低く、19年は29元(約460円)だった。現在、重大疾病、高齢者がん保障、慢性疾患、公共交通傷害プランの4種類のサービスがある。極めて原始的な仲間内の助け合いのような仕組みだが、それを1億人という膨大な数のスケールにしているのは驚異的だ。ちなみにサービス開始当初は保険商品として始まったが、当局が保険商品としての要件を満たしていないと指導。現在は保険ではなく、会員間の助け合いサービスという位置づけになっている。

 なぜ、相互宝はこれほど爆発的な人気を得たのか?中国の社会保険制度に詳しいニッセイ基礎研究所保険研究部の片山ゆき準主任研究員によると、「タッチポイントの広さ」と「分かりやすさ」がポイントだという。