アマゾン、eBayという米国の巨大IT企業を中国市場で倒したアリババ。その背景には「信用」を築く技術があった。特集『幻の30兆円上場、アリペイの真実』(全5回)の#3では、アマゾンを倒したアリペイの実力を探った。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
巨人アマゾンは
なぜ中国で敗北したのか
世界を席巻する米GAFAだが、中国で成功したのはアップルだけだ。グーグルは2006年に検閲を受け入れた中国版検索サイトをリリースしたが、10年に同サービスを閉鎖し、事実上中国市場での検索サービスから撤退した。
スマートフォンOS(基本ソフト)「アンドロイド」も同様だ。中国ではアンドロイド自体はスマートフォンからスマートホーム製品、カーナビなど幅広い分野で活用されているが、いずれも「AOSP(アンドロイド・オープン・ソース・プロジェクト)」と呼ばれる、グーグルサービス抜きのオープンソース・ソフトウエアが使われている。
自ら中国市場とたもとを分かったグーグルと異なり、フェイスブックは中国政府に何度も秋波を送ってきたが、いまだに参入許可を得られないままでいる。
検索のグーグル、SNSのフェイスブックとは異なり、競争の末に敗北、撤退したのがEC(電子商取引)のアマゾン・ドット・コムだった。19年4月にメインのEC事業を閉鎖し、今ではわずかに電子書籍事業と越境EC事業を残すばかりである。米調査会社eMarketerが18年7月に発表したレポートによると、中国EC市場におけるアマゾンのシェアはわずかに0.7%。事業を続けこそしていたものの、はるか以前に勝負はついていた。
アマゾンを倒したのが6割近いシェアを持つアリババグループだが、まだベンチャー企業だった2000年代に米国の巨人を倒すことができたのは、支付宝(アリペイ)に象徴される、「信用」を担保するテクノロジーだった。