糖尿病は腎臓の血液濾過効率を低下させるとともに、高血圧を招く。そして高血圧は、「火に油を注ぐように腎臓病を加速させる」と同氏は語る。結果として、心臓と腎臓が互いに影響を及ぼし合って病状を悪化させる「心腎連関」を引き起こし、その根源である高血圧をさらに悪化させるという。しかもこの悪循環は、目に見えないかたちで進行する。
「2型糖尿病患者の多くは診断さえされておらず、糖尿病になってから最初の約5年間は、必要な薬物療法が行われないまま経過している。一方の高血圧も『サイレントキラー(静かな殺し屋)』として悪名が高い。そして腎臓病も、末期になるまでほぼ症状が現れない」と、同氏は解説する。CDCによると、糖尿病と診断された米国成人のうち、推定で37%が慢性腎臓病を発症している。また米国腎臓財団は、2型糖尿病患者の最大40%が最終的に腎不全に至ると推計している。
一方、比較的新しい糖尿病用薬は、これらの問題を改善する可能性がある。SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬と呼ばれるタイプの薬剤だ。「Circulation」9月号に発表されたAHA科学声明の筆頭著者であるJanani Rangaswami氏は、これらの薬剤による治療を「画期的な治療法」と記している。これら両剤は、心血管系のトラブルが原因の死亡を減らすという、複数の研究結果に支持されたエビデンスが存在する。
前出のBhalla氏もAHAの科学声明の執筆陣の1人だ。同氏は、この2剤に副作用があることを認めながらも、「全ての腎臓内科医が、これらの薬の使用を検討しているのではないか」と語っている。しかし、これらの薬剤をどの診療科の医師が処方するのかという問題もある。「複数の疾患を持ち、複数の診療科で治療を受けている患者が最適な治療を受けられるようにするために、医師同士のコミュニケーションが不可欠だ」と同氏は強調する。
医師同士のコミュニケーションの問題を、患者サイドで解決する方法を提案するのは、米国腎臓財団と米国糖尿病学会(ADA)、そしてAHAでボランティア活動をしているJane DeMeis氏だ。同氏は、「患者は自分自身の“ヘルスケア委員長”になる必要がある」と話す。そして、いつも接している複数の医師の中から1人を擁護者として選び、その医師に治療法の調整役になってもらうと良い」と述べている。(American Heart Association News 2020年11月4日)
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