『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

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[質問]
自分が学びたいことを学べる「学部」がわかりません

 理系の高校生です。今まで人間の感情と脳とについて研究したくて勉強してきましたが、最近、言語の発達と人間の思考や感情の関係について興味を持ちました。色々調べてみたのですが、どの学部に進めばいいのか、はたしてこれは理系なのかどうか、私にはわからなくなってきました。読書猿さんのブログを見て、もしかしたらと思い質問させていただいております。読書猿さんに聞くようなことじゃないかもしれませんが、答えていただければ嬉しいです。

複数あるので、一番入りにくいところを目指してみてください

[読書猿の回答]
 確かに難しいと思います。原因は二つあります。ひとつは提示されているような未解明部分の多い大きな問題については、いくつものアプローチがあり得ること、もうひとつは学問は生きており現代進行形でそれぞれの前線を拡大していることです。

 たとえば、あなたが最初に興味を持たれた脳についての関心から広げるならば、認知神経科学という分野が、脳科学で蓄積された手法を武器に従来心理学や認知科学で取り組まれてきた、こころ、思考、感情の問題に取り組んでいます。言語と発達という面でいえば、ピアジェやヴィゴツキーの先駆的研究から発展した発達心理学があります。感情と言語の関係でいえば、感情表現研究に手を広げている認知言語学がありますし、認知の発達に注目するなら「心の理論」を展開したプレマックは霊長類(チンパンジー)研究の出身です。

 他に生物学に近いところでは比較認知科学進化心理学のアプローチも考えられます。面白いものでは、我々の先祖がヒトとなった進化適応環境に近い社会環境にあると考えられる狩猟採集民を対象に文化人類学の手法で幼児の感情や象徴使用の発達を解明する研究を科研費データベースで見た記憶があります。浅学な私が知らない/気づいてもいない分野・アプローチがまだまだあるはずです。

 重要なのは、様々な学問からのアプローチが可能であるだけでなく、必要であることです。あなたが将来どの分野でこのテーマを研究するにしても、他の多くの分野を参照し、また連携・協働していくことになると思います。

 ともあれ当面のところ、進路はひとつを選ばなくてはなりません。実用的には、まずは一番入りにくいところをめざし、成績と条件に応じて進路変更するのがよいでしょう(易→難よりも難→易の方が変更しやすいので)。

 認知神経科学なら医学部、発達心理学なら心理学部(教育学部)や心理学科、言語学は文学部、生物学系は理学部等になると思いますが、どの大学でも学べるとは限らないので要調査です。

 最後に、各分野の様子が分かる文献をいくつか挙げておきます。
『イラストレクチャー認知神経科学 : 心理学と脳科学が解くこころの仕組み』
『ベーシック発達心理学』
『認知言語学とは何か ―あの先生に聞いてみよう』
『心の理論―心を読む心の科学』
『比較認知科学 (放送大学教材)』
『進化心理学を学びたいあなたへ』