大量の仕事を手放したら入ってきた、こんまりNetflix進出の裏側
「こんまり」プロデューサーが明かす自分らしく輝くセルフプロデュース術
大切なのは「手放す」こと
僕自身は講演が得意で好きだから、彼女の苦しみに気づけていませんでした。いや、本当は気づいていたけれど、気づかないふりをしていたのかもしれません。
日本にいた頃には考えられないような栄誉あるオファーばかりが降ってきて、つい舞い上がってどんどんと仕事を受けていた。麻理恵さんが笑顔を曇らせていても、何とか背中を押して。でも、そうじゃない。僕は、間違っていたんだ。
人々にときめきを伝える近藤麻理恵が、彼女らしくときめくことができなくなるなら意味がない。僕がプロデューサーとしてすべきなのは、仕事を詰め込むことじゃなくて、彼女が本来の姿でいられるように思い切って「手放す」ことだ。
夜が明け、僕の考えを伝えると、麻理恵さんの頬がふーっとゆるんで、つぼみが開くように笑顔を取り戻して「よかったぁ」とひと言。緊張が解け、彼女にエネルギーが戻ってくるのを感じました(ちなみに麻理恵さんの記憶によると、このホテルの窓は少ししか開かない仕様だったため、飛び降りる危険はなかったそう。でも僕が考えをあらためるいい機会になりました)。
量を最小化し、質を最大化する
それ以降、新しい講演のオファーは原則として辞退し、取材の数もかなり絞り込みました。感覚としては99%カット。多い時には週400件あったオファーを次々にお断りしました。唯一受けたのは、麻理恵さんが自然体で力を発揮できると確信できて、こんまりメソッドの普及にも効果的だと思えるものだけ。
断れば、次はないかもしれません。周囲の人はそう心配してくれたりもしました。
でも、実際に起こったことは、それとは逆のことだったのです。
99%の周囲から寄せられる期待を捨てて、たった1%の心からときめく仕事を選んでいく。するとその1%については自然と気持ちが入るし、人を感動させられる価値を生み出せるようになったのです。
量を最小化することで、質が最大化する。
輝くために、あえて引き算をする。
結果として、麻理恵さんの仕事の質が上がっていくというリズムが出来上がりました。特に彼女が最もやりがいを感じる片づけコンサルティングの現場では、本来の麻理恵さんの魅力がそのまま発揮され、これまでの何倍、何十倍も高い価値を生み出すようになり、クライアントに感動していただける経験が繰り返されました。
徹底して引き算をすると、余白が生まれます。
空白ができると、新たにチャンスが降ってきた時にもすぐに動くことができる。
僕たちの場合、それが動画配信サービス「Netflix」で麻理恵さんのオリジナル番組をつくるというプロジェクトでした。(次回に続く)
川原卓巳(かわはら・たくみ)
KonMari Media,Inc Founder and CEO/Producer
1984年広島県生口島生まれ。大学卒業後、人材教育系の会社に入社し、のべ5000人以上のビジネスパーソンのキャリアコンサルティングや、企業向けのビジネス構築・人材戦略を行う。近藤麻理恵とは学生時代からの友人であり、2013年以降は公私共にパートナーとして、彼女のマネジメントとこんまりメソッドの世界展開のプロデュースを務める。2016年アメリカ移住後、シリコンバレーとハリウッドの両方に拠点を置きながら、KonMariのブランド構築とマーケティングを実施。日本のコンテンツの海外展開なども手がける。2019年に公開されたNetflixオリジナルTVシリーズ「Tidying Up with Marie Kondo」のエグゼクティブプロデューサーでもある。同番組はエミー賞2部門にノミネートされた。
まずは行動してみよう!
本連載を読んでくださって、ありがとうございます。
書籍『Be Yourself』では、これまで僕が経験してきたことから、あなたに伝えたいと思ったことを書かせていただきました。
一つひとつを順番に試してもらえたら、確実に人生が変わる。そう確信しています。
だからこそ、まずは実践してみてください。行動してみてください。動いてみてください。
情報は世の中にあふれています。本を買わなくたって、ネットサーフィンをするだけでもたくさんの情報を得られます。
でも、知っているだけでは人生は変わりません。本を読んで、「やってみよう!」という気持ちになって、まずは動いてみる。
もし書籍『Be Yourself』を通じて、何かを感じていただけたなら、その情熱のまま、小さくてもいいから簡単なことから始めてみてください。動き出すと、人生は確実に変わります。そして、その変化を起こした自分をほめてあげてください。
紛れもなく、あなた自身が決断した第一歩なのだから。
種明かしをすると、僕はこの本を、昔の自分の背中を押すつもりで書きました。
書いては消し、何度も練り直し、思った以上に時間をかけることになったのは、「何者にもなれないんじゃないかと焦っていた過去の自分」「やりたいことに蓋をしていた過去の自分」と対話を繰り返していたから。
当時の自分でも臆せず行動に移せるよう、実際に行動できる内容に整理し、各章の最後には実践すべきチェックリストも用意しました。また書籍『Be Yourself』の巻末には、自分を知り、活かし、発信し、環境を変えて、磨き続けるためのチェックシート記入見本も用意しています。
自分らしく輝くのは決して難しいことではありません。新しい一歩を踏み出しましょう!
本書の主な内容
■第1章 自分を知る
まずは片づけから始めよう
あなたの魅力は「外」ではなく「内」にある
過去を手放しても「ゼロ」にはならない
「やりたくない」を書き出そう
あなたの「好き」が稼げるかは考えなくていい
時には堕落しきってみよう
■第2章 自分を活かす
時代の文脈を読む
まずは誰か一人の役に立とう
一つずつ丁寧に。途中で失敗してもいい
脱マウンティングのススメ
MUSTの円を小さくする
「今、有名か」は関係ない
■第3章 自分を発信する
最初は良き「受信者」になろう
お金を払って受け取ろう
最前列でかぶりつけ
得意な表現方法を選ぼう
最初はリツイートだけでいい
つながるチャンスを逃さない
■第4章 環境を変える
環境を変える5つのサイクル
てっぺんを目指さなくたっていい
「当たり前」の基準を変える
手を挙げるだけで抜きん出る
上手に「助けて!」と言ってみる
GIVEのしすぎに注意しよう
■第5章 自分を磨き続ける
シルクのパジャマで自分を大切に
早起きで地球を独り占め
夫婦のミーティングは散歩をしながら
午後イチはご褒美タイムから始めよう
身近な人を「さん」付けで呼ぶ
本来のあなたに戻してくれる人を大事にする