デバイスを含め6週間でスピード開発した
「大浴場混雑度」確認サービス
こうして地道な積み重ねで経営陣の信頼を勝ち取り、体制の拡充とさまざまなシステムの開発を進めていた星野リゾートの情報システムグループ。2020年からは3カ年計画でシステムの全面的な再構築を図ろうとしていた。その矢先、新型コロナウイルス感染症が世界中で流行し、旅行業界全体に大きな打撃を与えた。
星野リゾートも例外ではなく、新型コロナで多大な影響を受けた。その影響はシステム部門にも及び、スタートするはずだった3カ年計画は白紙に戻る。
「これまでに開発していたシステムでは、これほどの施設増を前提としていなかったので、3カ年計画ではこれを効率化したかったのですが、コロナで新たな開発はストップし、現状を維持することになりました」(藤井氏)
「未来への投資を企画していたところから一転、観光業が生きるか死ぬかの状況になって、『生き残ること以外は一切やめよう』『まずは会社が生き残ってから未来のことを考えよう』となりました」(久本氏)
4月に全案件がいったんストップした後、プロジェクトのうち「現金を確保できるもの」は続けることになった。
「例えばクレジットカード手数料削減のために、旅館業としてではなく旅行会社として予約を受け付けるようにシステムを改定するプロジェクトは残りました。星野リゾートは事前予約の割合が多いので、この対応はインパクトが大きいとの判断からです」(久本氏)
「ほかにコストカットのための開発も続けることになりました。AWS(アマゾン ウェブ サービス)の利用状況を可視化して、負荷に合わせて縮小ができるようにする開発はその例です」(藤井氏)
ふるさと納税の返礼品として発行されるギフト券対応や、「キャッシュレス・消費者還元事業」の適用対象として4月から6月まで実施した、宿泊ギフト券5%還元への対応も「未来の宿泊予約を押さえることで、今、現金化ができる」ことから、開発プロジェクトは続けられた。
とはいえ、全体としては業務が減少し、「4月からの仕事がなくなったことで、メンバーのモチベーションがなくなっていくことが心配でした」と藤井氏は明かす。