計画変更、緊急案件……
「コロナは業務の幅を広げるチャンス」

 直近では、GoToトラベルキャンペーンへの対応で忙しかったという星野リゾートの情シスチーム。GoToトラベルについては、「大きなキャンペーンになるということは予想していたものの、初めは対象となる取引の線引きなどが分かっていませんでした。放っておくと自社チャネルは対象にならないんじゃないかと不安になりました」と久本氏は言う。

「星野リゾートのようなホテルでは、自社サイトでキャンペーン対象商品を売れなければ意味がない、とロビー活動的なことも行いました。キャンペーンに関する資料を(省庁から)取り寄せても、仕組みがなかなかはっきりしないので、予測でシステムを作り始め、情報の変更に合わせて作り替えていきました」(久本氏)

 こうして計画変更や緊急案件、GoToトラベルキャンペーンへの対応などに追われたものの、情シスチームがコロナ禍にも折れず、スピードを持って変化に向き合えた理由のひとつは、IT開発の内製化が進んでいたことにある。内製するシステムに関する教育は、どのように行っているのだろうか。

「とにかくメンバーに情報を共有することです。システムにかかわる部分や案件に関係のあることだけではなく、全社の戦略まで話して、その中で自分たちが何をやるべきなのかを考えられるようにしています」(藤井氏)

 久本氏もエンジニアへの教育について「エンジニアとしてのキャリアはあるので、そこを改めて教える必要はほとんどありません。むしろ会社の戦略や業務、現場について知ることの方が大事です」と述べる。そして、「目的が分かれば、自分で動くようになります。システムを深く分かるより『こういうことをやりたい』『やろう』と思うことが大切だと思っています」と続ける。

 久本氏は毎月、経営陣とシステム投資についてミーティングを行っているそうだが、10月からはようやく「次を考え始めよう」ということになり、未来への投資の復活提案に向けて計画を立てているという。

「今後は中長期計画へ向けて、コロナを乗り越えて次を目指していきます」(久本氏)

 また藤井氏は「コロナのおかげで、我々の業務の幅が広がるチャンスができました」と語る。

「以前の状態のままでは、システムが(こうした危機的状況での)ボトルネックになっていました。そうならないように何ができるかを考え、注力していきます」(藤井氏)