久本氏も「運用・インフラを担当する軽井沢チームはコスト削減のためにやることがいろいろとありましたが、開発チームは不安だったと思います」と振り返る。
「仕事がない人は帰休となって、会社のために何とかしたいのにやることがない。ですが、自分たちができることをアピールすることは大切です。そうした折、3密回避のためにITでカバーできることを見つけて実装したのが、大浴場の混雑度を見える化するサービスでした」(久本氏)
実は、3密回避の対策検討は最初、現場にオーダーされていた。そこで大浴場のげた箱にカメラを設置してストリーミングするという案が挙げられ、設置の相談が情報システムグループへ回ってきた。
「げた箱の空き状況で可視化できるのでは、というアイデアだったのですが、カメラ設置・ストリーミングとなるとプライバシーの面でも問題があります。そこでIoTデバイス(距離センサー)を使い、スマートフォンで確認できるシステムをつくるべきだと提案したんです。情シスの力を使えば、よりスマートなものが短期間でつくれますよ、と」(久本氏)
藤井氏によれば、開発はオリジナルのセンサーデバイスも含めて、6週間で行ったという。
「対応のスピード感もあわせて、『ゲストに安心してご利用いただける』ということを星野リゾートのブランドとしてうたいたかったので、『完全でなくても、すばやく開発しよう』ということになりました」と佐藤氏は言う。
ただし、最初は1施設への導入から小さくスタートする予定だったのだが、星野代表がテレビで「全施設で6月から対応する」とコメントしたことから、情報システムグループはこれに対応せざるを得なくなった。
「予定では1施設のテスト導入で1カ月半、その後の開発で1カ月かけるつもりだったのですが、結局、全て6週間でリリースすることになりました(笑)。IoTデバイスについては、パッケージ製品を使うとシステムの制約上、逆に1カ月半の短期間では開発が間に合わないことが分かっていたので、最初からデバイスをつくって早く現場へ合わせていこうということになりました」(久本氏)