過去を「手放す」ことからすべては始まる

――本の構成は、「自分を知る」「自分を活かす」「自分を発信する」「環境を変える」「自分を磨き続ける」と、段階的にステップアップしていく流れになっています。麻理恵さんがなぜ「世界のこんまり」として成功することができたのかも分かる内容で、「そういうところにこだわっていたのか」と腑に落ちる部分もありました。

川原:Twitterで新しく人とつながったり、みなさんの働き方や生き方に触れたりするようになって、外に目が向くようになったんです。すると、現状を変えたいと感じていても、一体、自分が何をしたいのか分からない、何から手をつければいいのか分からないという人、仕事や人間関係や環境に違和感があっても、どう変えればいいのか分からないという人が、たくさんいると分かりました。それって全部、麻理恵さんや僕が経験してきたことでもあります。

 だから、悩み別に分解して、僕たちが何を考え、何を実践し、何を手放してきたのかというセルフプロデュースのメソッドを伝えることが、この本の骨子になっています。

プロデューサーが明かす、こんまりのたった一つの強みとは?妻でもある近藤麻理恵さんのプロデュースを通して構築したメソッドが『Be Yourself』に盛り込まれている

――そのような経験をふまえた上で、「あなたはそのままでいい」と繰り返しおっしゃっているわけですね。

川原:その考え方には自信があります。実は僕自身、ずっと自分らしさが分からなくて、何者かになりたくてもなれない不安を感じながら生きてきたんです。

 でも結局、会社員を辞めて、麻理恵さんのビジネスパートナーとして生きる道を選んで、不要なものをすべて「手放した」ことで、自分らしく生きられるようになりました。

――川原さんが麻理恵さんと初めて出会ったのは、21歳のときだったそうですが、6年後に再会するまでは遠い友だちだったと聞きました。

川原:学生時代に就活系のイベントで出会って、エレベーターの前で名刺交換したのがきっかけでした。麻理恵さんは19歳から片づけコンサルタントをしていたので、仕事の名刺をいただいて。そこから友人関係が長く続いて、年1回連絡するかしないかのゆるい関係でつながっていました。

 その後、2009年に彼女から「本を書こうと思っている」という話を聞いて、翌年、発売された本があっという間に100万部を突破。それを機に彼女は片づけコンサルタントとしてさらに有名になっていきました。

 僕は人材教育系の会社でコンサルタントとして働きながら、彼女にいろいろとアドバイスしたり、逆に仕事ばかりで視野が狭くなっていた僕の相談に乗ってもらったりしているうちに、パートナーとしての関係が始まったのです。

――麻理恵さんの第一印象で、「この人、何かが違う」と将来性を感じるようなインパクトはあったのでしょうか。

川原:ありませんでした。ただ、「変わった子だな」とは思いました。流行とか一切無視して我が道を行くタイプで、俗世離れしていたんです。目の前で話していてもそこにいないような、妖精みたいな感じ。神社が好きで、巫女の経験もあるので、普通の人でないことは分かりました。

 ただ、本が出る前は、麻理恵さんが片づけの話をしても、ほとんど聞いていなかったんです。だって、片づけですよ?「片づけが趣味なんだね」くらいにしか受け取っていませんでした。でも彼女は、有名な出版コンサルタント土井英司さんのセミナーに参加して、お叱りを受けてもめげずに、5歳の頃から好きだった片づけのスキルやノウハウを、見事、一冊の本にまとめあげたんです。

 それほど、片づけに対する熱い思いがあって、本を出したことでより積極的に活動するようになった。彼女自身も、彼女の人生も、特異な変化を遂げていったように思います。