プロデューサーが明かす、こんまりのたった一つの強みとは?

雑誌「TIME」による「世界で最も影響力がある100人」に、片づけコンサルタント「こんまり」こと近藤麻理恵さんが選ばれたのは2015年のこと。その前から、彼女のマネジメントを担当し、「こんまりメソッド」の世界展開をプロデュースしたパートナー、川原卓巳さんの初著書が発売された。タイトルは『Be Yourself』。本書は、麻理恵さんと川原さんがどのように「こんまり」をプロデュースしてきたのかを振り返り、誰もが応用できる再現性のあるメソッドにした「セルフプロデュースの教科書」だ。
変わりたくても変われない人、ストレスフルな人間関係にうんざりしている人、今の環境に全く満足できない人……。どんな悩みを持つ人も、「自分の中にある才能を引き出せば、ありのままの姿で輝き出す」ことができると確信を持って伝える川原さん。その理由について、率直な疑問をぶつけてみた。全4回インタビューの1回目は、お二人のなれそめと、世界が注目する「こんまり」の一番の強みについて仕掛け人に聞いた。(取材・構成/樺山美夏、撮影/Ogata)

「こんまり」プロデュースの
ノウハウを、広く伝えたかった

――川原さんは、世界的に活躍されている「こんまり」のプロデューサーで、夫でもあり、二児の父親として家事・育児もされています。今まで川原さん単独で表に出ることはあまりありませんでしたが、初の著書を出そうと思ったのはなぜでしょうか。

川原卓巳(以下、川原):きっかけはコロナ禍ではじめたTwitterです。僕たち家族はロサンゼルスに住んでいるのですが、新型コロナウイルスの影響で、1年先まで決まっていた麻理恵さんの仕事の予定が全部なくなってしまって。

「なにしようか?」と考えて最初に思いついたのが、「友だちがほしい!」ということでした。仕事関係者とのつながりは増えたけれど、友だちとは疎遠になっていたので、もう一度つながり直そうと思って、今年2月頃からTwitterを始めたんです(アカウントは@takumikawahara)。

 といっても、何をつぶやけばいいかわからなかったので、僕が日本の人材教育コンサルティング会社で働いていた頃の後輩で、山田研太というプロデューサーがセルフブランディングについて書いているnoteの有料記事を買って読みました。高かったんですが、自分にもできそうな内容が多くて、すぐに試してみたらフォロワーが1日に1000人ずつ増えていきました。

プロデューサーが明かす、こんまりのたった一つの強みとは?川原卓巳(かわはら・たくみ)
KonMari Media,Inc Founder and CEO/Producer
1984年広島県生口島生まれ。大学卒業後、人材教育系の会社に入社し、のべ5000人以上のビジネスパーソンのキャリアコンサルティングや、企業向けのビジネス構築・人材戦略を行う。近藤麻理恵とは学生時代からの友人であり、2013年以降は公私共にパートナーとして、彼女のマネジメントとこんまりメソッドの世界展開のプロデュースを務める。2016年アメリカ移住後、シリコンバレーとハリウッドの両方に拠点を置きながら、KonMariのブランド構築とマーケティングを実施。日本のコンテンツの海外展開なども手がける。2019年に公開されたNetflixオリジナルTVシリーズ「Tidying Up with Marie Kondo」のエグゼクティブプロデューサーでもある。同番組はエミー賞2部門にノミネートされた。

――川原さんのツイートは、読む人を元気にする言葉、ハッと気づかされる言葉が多いです。

川原:僕が発信できる有益な情報は、主にプロデュースに関することです。人が自分らしく生きるためのセルフプロデュースの重要性や、日本から世界に向けて人をプロデュースしていく考え方やノウハウですね。

 そいうことをつぶやいていたら、どんどんおもしろい人たちとつながっていって、ファクトリエ社長の山田(敏夫)さんとも仲良くなりまして。直接、二人で話して、僕がやってきた仕事や苦労話をしたら、「卓巳くん、それは本にしたほうがいいよ」と、すぐに編集者とライターを紹介してくれたんです。

――『Be Yourself』というタイトルは、直訳すると「あなた自身になろう」。このメッセージは最初から決まっていたのでしょうか。

川原:取材を受けて僕が話したことをまとめてもらったのですが、最初は自分でも何を伝えればいいのか曖昧でした。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、誰もが働き方や生き方を見直すようになり、自分の身の振り方を考えるようになったとき、具体的にどうすればいいのか分からないと悩んでいる人が多いと気づいたんです。

 であれば、麻理恵さんと僕がしてきたことは、生き方や働き方、チャレンジの仕方、チャンスのつかみ方まで、参考にしてもらえる部分がたくさんあるかもしれない。日本から世界へ活躍の場を広げた経験を、あらためて誰もが実践できるセルフプロデュースメソッドに落とし込んで伝えたい、という方向性が見えてきました。

 そういうやりとりをするうちに、「Be Yourself」という言葉が出てきて「これだ!」と。バラバラだったピースがパチンとはまっていきました。この感覚って、麻理恵さんが片づけで「ときめき」という言葉に出会った瞬間に近くて、今まで僕たちが考えてきたこと、やってきたことが全部この言葉に集約されていきました。