やり抜く力「GRIT」が
不幸を招く?
2016年刊行のベストセラー『GRIT やり抜く力』。アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース教授は、情熱を持ち、やり抜く力を発揮することで成功を掴めると提唱します。
しかし、重松先生は「諦める勇気」の重要性も強く説きます。
「頑張る力は成功に必要です。でも、一つの目標に最後まで執着することが、必ずしも成功をもたらすとは限りません。より良く生きる(well-being)視点では、むしろ逆のこともあるのです。
ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は、柔軟性と執着心の両方が必要と話しました。柔軟性とは、自分が失敗したと認め、違う方向へ向かう勇気です。
人には限界があります。優秀な学生はそれを認めたくない。
限界になったら、スタンフォードに行くことより、より良く生きることのほうが大事だと頭ではわかっても、受け入れるのは簡単ではありません。
キリスト教のニーバーの祈り『神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ』は有名ですが、日本の『仕方がない』の概念は、とても大切。変えられないものを受け入れる、変えられるものを変える、どちらも勇気が必要なのです」
努力をして達成しようとする、頑張って夢を叶えようとするからこそ、限界に直面したことがあなたにもありませんか?
「とにかく続けよう」「弱音を吐いてはダメ」「諦めたら終わり」と走り続けた結果、体を壊す、精神的にダメージを受ける、うつを発症するケースもあります。
現代人が健康を害する原因として、自分で自分を追い込んだストレス、「無理のしすぎ」も少なくないでしょう。