経済学者や経営学者、エコノミスト111人が選んだ2020年の「ベスト経済書」をランキング形式でお届けする『ベスト経済書2020』(全5回)。第4回は、第4位となった『世界経済史から見た日本の成長と停滞 1868-2018』を紹介する。明治以降、日本の1人当たりGDPが主要国対比でどのように推移してきたか、成長の源泉はどこにあったのか、著書の眼目について語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
ベスト経済書2020 第4位【66点】
『世界経済史から見た日本の成長と停滞 1868-2018』
(深尾京司 著)
生産性と長期経済発展の研究を接合
私が最近取り組んできたのは、日本の企業と経済における生産性停滞の原因解明と超長期経済発展の数量経済史による研究だ。後者は一橋大学経済研究所のお家芸みたいなものだ。
2019年初夏に英国のウォーリック大学に客員として1カ月滞在していた。そこで、ニコラス・クラフツ教授の隣の研究室をお借りした。彼は産業革命以来の英米の生産性に関する大家である。彼に何回か話し相手になっていただく間に、私がやってきた生産性研究と超長期経済発展の研究を接合して議論できることに気付いた。それで本書の主題が決まった。
この本は一橋大学経済研究(和文)叢書の第67巻である。一橋大学経済研究所の所員は任期中に1冊書くことが不文律のようになっている。私は退職間際にぎりぎりでこの「卒論」を仕上げることができた。