一流企業の多くは財務レバレッジを巧みに活用している

林教授 そこが経営者の腕の見せ所なんだよ。借金は少ないほどいいというものではない。一流企業の多くは財務レバレッジを巧みに活用している。下の図を見てごらん。君はどう考えるかな? この比率からそれぞれの経営者の考え方が推測できるよ。

カノン オリエンタルランドの財務レバレッジが1.3倍と意外と低いですね。

林教授 意外と思うだろうが、2020年3月31日のこの会社の現金預金は2600億円だった。ところが有利子負債は870億円だよ。つまり、借金する必要がないのにあえて借金をしている。

カノン なぜですか?

林教授 そのほうが会社にとって有利だからだ。

カノン どういうことです?

林教授 資金の調達コストが安くなるからだ。

カノン 自社のお金なら利息は掛からないのに、借金すると逆に資金の調達コストが安くなる? なんだかヘンな話ですね。

林教授 そうだね。財務に詳しくないとなかなか理解できない点だね。詳しい説明はもう少しあとにしよう。

カノン わかりました。あと、ソフトバンクの財務レバレッジが4.7倍って高すぎませんか?

林教授 ソフトバンクの2019年12月末の有利子負債は約17兆円だ。ものすごい金額だが、貸し手の銀行はソフトバンクなら返せると判断したから増え続けたのだろうね。

カノン 借金はいずれ返さなくてはならないのですよね。でも、こんなにレバレッジを利かせすぎるのは危険ではありませんか?

林教授 一般に財務レバレッジが高くても、借金を返せると思われているうちは問題はない。だが、経営につまづくと、金融機関や投資家たちは資金を引き上げ、株価は下落して会社の不況抵抗力が一気に弱まる。最近、ソフトバンクもウィーワークへの投資の失敗でつまづいてしまった。利害関係者の見る目は厳しくなる。この会社がどんな手を打ってくるか、目が離せないね。