エクセル経営で全社員が
経営に参画する会社に変える
土屋:エクセルでデータを分析し、発見し、戦略を考えるわけですが、単にエクセルのデータをつき合わせるだけでなく、エクセルを使って自由に議論することで、社内の知恵を集められます。それを全社員できるよう今、訓練しています。
御立:どんな教育をやっているのですか。
土屋:現場で使うことです。ワークマンに入社するとすぐに店長になります。
1年目は商品の名前を覚え、2年目は売り場を自分で改善します。
ビジネスに必要な因果関係を証明するには実験するしかありません。WORKMAN Plusができるまで、ワークマンにはマネキンがなかったのですが、そんな時代に入社2年目の店長が、簡易マネキンをつくったことがありました。
上着はハンガーにかけ、ズボンの中に段ボールを入れて紐で吊るし、上下のコーディネートを目立つ位置に展示しました。
社員の中には「いくらなんでも段ボールはみっともない」と言う人もいましたが、その社員が育つならウェルカムです。
現場で考え実験し、その結果、「会社はマネキンを使うべき」と提案してきました。それが結実したというか、WORKMAN Plusにはマネキンが並んでいます。
御立:データ経営の成果を感じておられるわけですね。
土屋:じつはWORKMAN Plusの品揃えは「エクセル経営」で決まりました。全取扱製品から一般客が買っている製品を抽出し、ショッピングモール店の品揃えを決定しました。
モール店での取扱製品数を370アイテムから200に減らし、しかも在庫もほとんどありません。新業態をデータで運営して、営業利益を2年前に比べ181%伸ばしました。これは「エクセル経営」が浸透したからでしょう。もしそれが根づいていなければ、在庫が残り、低価格路線も崩れてしまいます。
御立:たしかに。
土屋:ワークマンの製品数はユニクロより多く、デザイン的にはユニクロより派手でインスタ映えします。インスタに載るということは「癖が強い」「個性がある」わけで、売れ残ったら一大事です。これを「エクセル経営」が支えています。
御立:考えて行動できることこそエクセル経営ですね。
土屋:エクセル経営はデータを見ながら会社を改革していくものです。データマインドと改革精神をもった人でないと基本的にはやりたいと思いません。
開始当時、エクセル経営に反対する幹部もいました。でも、人事には手をつけませんでした。8年待ち、役員が退任するなどして、今では役員と幹部全員がデータマインドと改革精神をもっています。
御立:ジャングルファイターが8年間もよく待ちましたね。
土屋:ワークマンに来て自分の中の時間の流れ方が変わりました。「エクセル経営」の完成にはあと10年くらいかかると思います。
その代わり、達成したときはすごい会社になっているでしょう。みんながエクセルを使い、上意下達じゃなくて、自分の頭で考えて行動するでしょう。