エクセル経営でカフェを運営

御立:現場でデータを見て、考え、試すという文化を、まったく違う領域にもっていくことはできないでしょうか。
私が期待するのは、コロナ禍で相当ダメージを受けているサービス産業全般です。飲食業、旅行業などは、データ経営を取り入れているケースがまだまだ少ないのです。

土屋:なるほど。

御立:エクセル経営を活用してサービス業を元気にさせることはできないでしょうか。
現場での実験を繰り返し、何を、いつ、どのようやれば、お客さんの来店が増え、客単価がいくら上がったか、奥行きをもって把握するが全部わかります。
もし御社が直接経営されるなら、WORKMAN Plusや#ワークマン女子の店舗に隣接させて、お客さんがのんびりできる「WORKMAN Plus Cafe」「#ワークマン女子カフェ」をつくり、エクセル経営で売上を100倍とか1000倍にできたら面白い。外野からだと面白いもの見たさで、ついつい無責任なことを言ってしまいますけど。

土屋:やりたくてしかたないですけど、この「しない経営」という本が戒めになっています(笑)。

御立:でも、矛盾を超克しないと新しいビジネスへは行けません。「しない経営」を守りながら、ジャングルファイターの新しい活躍の場をつくるとするなら、器を分ける方法があります。たとえば分社化です。

土屋:なるほど。

御立:別のアイデアですが、街中でスポーツ体験施設を運営する会社と提携する方法もあるでしょう。クライミングをする施設を運営する会社とワークマンが組んで、カフェの経営は向こうが行い、こちらは投資とエクセル経営の提供を行います。そういうのならありかもしれない。

土屋:スポーツ体験施設との提携は販促として役に立ちますね。アーバンアウトドアで、ビルの屋上をキャンプ場にするというアイデアもあるでしょう。コロナ禍でもオープンな場所ならバーベキューはできます。そうすればアウトドアの客層が広がります。

御立尚資(みたち・たかし)
ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー
京都大学文学部米文学科卒。ハーバード大学より経営学修士(MBA with High Distinction, Baker Scholar)を取得。日本航空株式会社を経て、1993年BCG入社。2005年から2015年まで日本代表、2006年から2013年までBCGグローバル経営会議メンバーを務める。BCGでの現職の他、楽天株式会社、DMG森精機株式会社、東京海上ホールディングス株式会社、ユニ・チャーム株式会社などでの社外取締役、ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン専務理事、大原美術館理事、京都大学経営管理大学院にて特別教授なども務めている。経済同友会副代表幹事(2013-2016)。著書に、『戦略「脳」を鍛える~BCG流戦略発想の技術』(東洋経済新報社)、『経営思考の「補助線」』『変化の時代、変わる力』(以上、日本経済新聞出版社)、『ビジネスゲームセオリー:経営戦略をゲーム理論で考える』(共著、日本評論社)、『ジオエコノミクスの世紀 Gゼロ後の日本が生き残る道』(共著、日本経済新聞出版社)、『「ミライの兆し」の見つけ方』(日経BP)などがある。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。