進出市場を分析・選定する方法

 そのとき、次のような市場戦略マップを手で描いてみた。

ワークマン式ブルーオーシャンを発見する市場戦略マップ

 私はなんでも図にすることにしている。
そうすると、描きながらアイデアが浮かんでくるからだ。

 縦軸に「市場」の大小、横軸に「価格」の高低という4象限をつくる。

 市場が大きいときは汎用性も大きく、市場が小さいときはある機能に特化した趣味の世界の可能性がある。

 高価格ゾーンへの参入は、魅力は大きいが、実際には超激戦区だ。

 また、長期スパンだと単価が上がっていく。それはノルマが関係している。

 常に営業利益や粗利益の増加率で評価されるので、それを達成する必要がある。激戦区のため数量は増えないので、単価が上がっていく。

 低価格ゾーンは魅力は少ないが、徹底的にやりきると競争相手がいなくなる。

 それには経営者の強い想いが必要だ。経営者が「しない経営」を極める覚悟で、余計なことを全部やめ、低価格のみを追求する。

先ほど触れた自社の強み、強化ポイントと合わせて考えながら、4象限のどこに出るかを考える。

 こうした戦略マップは何度も描き直した。

 縦軸、横軸の要素を変えたり、業界を変えたりしながら考え続けた。

 さらに参入余地のない市場や業態でも、市場を「細分化」してみると意外な隙間が見つかることがある。市場細分化のキーワードを次に示す。

ワークマン式ブルーオーシャンを発見する市場戦略マップ

 常に隣接業界で何ができるかを考える。あまりにも遠い業界では細分化のヒントすら思いつかないが、隣接業界なら社内の知見を集めればある程度見えてくる。

 私はまず「アウトドアウェア市場を狙う」ととらえてみた。

 すると、大手ブランドメーカーの寡占状態だった。

 しかし、アウトドアウェア市場を「高価格」と「低価格」というキーワードで細分化すると、巨大な空白市場が見つかったのだ!

ワークマン式ブルーオーシャンを発見する市場戦略マップ

 当初、「アウトドアウェア市場はブランド力がないと参入できない」といわれていたが、それは細分化を考えなかったためで、完全に間違いだったのだ。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。