時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた企業改革請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売(1月13日)になります。本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。

米国式のマネジメントは、人が治める「人治」が基本Photo: Adobe Stock

マネジメントのやり方は、
「人治」と「法治」の二つがある

 組織のパフォーマンスをいかに向上させるか、そのやり方を考えてみると、「人治」「法治」の二つのマネジメントの切り口があることに気が付きます。あまり馴染みのない、これら二つについて説明しますので、しばしお付き合いください。

 まず「人治」は文字通り、個人の能力をもって、組織を治めるマネジメントの考え方です。

 より優秀な人材を組織図の上位に立たせ、その個人のイニシアティブや適切な判断、前向きな行動によって、事業や組織を発展、成長させる考え方です。我々が、ビジネスに関する本や論文で目にする経営理論のほとんどが前提にしている、米国企業のマネジメントスタイルが、この「人治」式です。

 日本においても、創業者が事業を立ち上げ、事業を伸ばす場合の多くは、全てにおいて当事者として自分で責任を持って判断するワンマン経営となり、典型的な「人治」式のマネジメントを行います。

「人治」のマネジメントで企業を発展させる場合、次の二つの少なくともどちらかは必須になります。

(1)優秀な人材を中途採用する
(2)社内でマネジメント能力のある人材を育てる

 まず一つ目の外部からの優秀な人材の中途採用に関しては、ヘッドハンターを使って探す、あるいはトップの人脈の中であたることになります。

 運良く、良い人材が見つかれば問題はないのですが、現実には、そう都合良く良い人材に巡り合えるものでもありません。仮に優秀な人材に出会えても、採用責任者との相性というフィルターでトップ面接や採用に至らないケースもありえます。

 一般論ですが、人は自分よりも優秀な人材を適切に評価できないと言われます。その結果として、採用すべき才能ではなく、ブランドも含めた肩書きやキャリアの見栄えだけの人材を選んでしまうことも多々あります。