新業態への進出は
もう一度できるか
内田:土屋さんの『ワークマン式「しない経営」』を拝読して「なるほど」と思ったのは、WORKMAN Plusはマーケットありきで始めたわけではなかったということ。最初から「一般向けの店をつくろう」と始めたのではなく、ワークマン来店者の中に何割かの一般客を発見し、その人たち向けに商品レイアウトを変えたり、製品の色合いの工夫を始めた。製品そのものを変えるのではなく見せ方を変えただけで、WORKMAN Plusの成功につながったのですね。
土屋:はい。
内田:そうなるとちょっと気になることがあります。戦略は社員一人ひとりが考えるのではなく、経営者が考えることだと思いますが、そのあたりはどうなのでしょう。
土屋:WORKMAN Plus1号店開店は2018年ですが、その3年前から一般のお客様が3割程度いることはわかっていました。そのデータは現場のSVから上がってきました。先ほどお話ししたように、私たちは「声のするほうに少し遅れて進化する」ことを心がけています。現場のSVがキャッチした「お客様の声」を、じっくりと見極め、3年たって初めて形にしたのがWORKMAN Plusです。
内田:なるほど。
土屋:2020年には#ワークマン女子を開店しましたが、WORKMAN Plus1号店の開店時に、女性のお客様が5割を超えていました。それを2年間準備して実施しました。一般向けも女性向けも、「一般向け店舗をつくる」「女子向け店舗をつくる」という仮説を立て、正しいかどうかをじっくり見極め、じっくり準備して行いました。
内田:それぞれの新業態の土屋さんの関与度はどれくらいですか。
土屋:WORKMAN Plusの場合、準備段階はほぼ私一人でした。3年間はほぼ一人で新業態の仕掛けを考えました。私の工数は0.2人/月、手伝ってもらった経営企画スタッフは0.1人/月程度です。全体としては10%くらいでしょう。製品や品揃えはまったくわからないので任せきりでした。
内田:#ワークマン女子についてはどうですか。
土屋:コンセプトだけ考えて、後はすべて社員に任せました。
内田:なるほど。新業態といっても既存製品を新しい顧客に売るフォーマットにのっとれば、WORKMAN Plus準備時のノウハウを応用しやすいのかもしれません。