先行きの見えない2021年。これからは「新しいこと」や「人と違ったこと」を考えるスキルが重要になってくる。だが、「考える」といっても、いったい何をどう考えればいいのか?
そんな人に読んでほしいのが、このたび刊行された書籍『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』だ。
著者の藤原麻里菜氏は、「無駄づくり」という異色のコンテンツをネットを中心に展開しており、これまでに何百もの作品を発表、その人気は海外にも波及し、台湾での個展では2万5000人もの観客が殺到、SNS再生数は4000万回にも達する話題の発明家だ。
そんな著者が、これまでに発明を何年も継続してきた中でつかんだ「考えるテクニック」をあますところなく詰め込んだのが本書だ。「何も出てこない……」とうんうんとうなっているなら、本書をパッと開いて、好きなワザを使ってみてほしい。「逆転」「主語変え」「マナー破り」「合体」「似たもの合わせ」……便利に使える思考ワザが満載である。
本稿ではこの『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』から特別に、一部を抜粋・編集して紹介する。
フィクションを現実的に考える
フィクションを現実的に考えることはアイディアにつながります。
「遅刻、遅刻ー!」と言いながらパンをくわえて走る女子高生が、曲がり角で転校生の男の子とぶつかるという少女漫画の展開を真似しようと、実際に食パンをくわえながら走ってみたことがあります。暇だったのです。
すると、よだれでパンがふにゃふにゃになり、数メートルでちぎれてしまいました。そして、くわえ続けるためには、強靭な顎の筋肉が必要なこともわかりました。
少女漫画の主人公はよだれが出ず、顎が強い、ということがわかりました。
必ずしも実際に再現しなくてもよいですが、ふだん深く考えることなく、なんとなく受け入れているシチュエーションを現実的に考えることで、新しい視点が得られます。
「食パンをくわえながら走る」をもっと現実的に考えていくと、「曲がり角でぶつかって相手がもしケガをしてしまった場合、自分は何か罪に問われないだろうか?」「相手にケガをさせないためにはどんな姿勢で、どの程度のスピードで走ればいいだろう?」など、考えるべき要素が見えてきます。たんに暇つぶしで考えていると、アイディアのきっかけになることもあります。
そもそも食パンをくわえて曲がり角を曲がったところで、誰かとぶつかる可能性は低いです。そう考えると、人が曲がり角にさしかかると、センサーが感知して知らせてくれる食パンがあれば便利そうです。
それを合図にダッシュをすることで、人とぶつかる確率が上がるため、下手に合コンに行くよりも、その食パンをくわえて待っていたほうが運命の人に出会えるかもしれない……と考えて、「ぶつかる確率が上がる食パン」というマシーンを制作したことがあります(下図参照)。
人がセンサーの前を通ると、食パンのLEDが光って教えてくれる。(『考える術』より)
「あるある」の問題解決をする
このように、多くの人がなんとなく共有しているイメージに対して、うるさいくらい細部に疑問を抱いて考えていくと、想像が膨らんでアイディアをつかむことができます。
また、「落としたハンカチを拾ってくれた人と恋に落ちる」というありがちなシチュエーションがありますが、ハンカチを落としたところで自分の好みの人が拾ってくれる可能性はとても低いです。この問題はどうやったら解決できるでしょうか。
後ろを歩いている人をモニタリングできるようにする、機械学習でわたしの好みの男性をマシーンに学習させて自動的にハンカチを落とさせる……。さまざまな考え方ができそうです。
(本原稿は、藤原麻里菜著『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』の内容を抜粋・編集したものです)
1993年、横浜生まれ。発明家、映像クリエイター、作家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とかつくりあげる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。SNSの総フォロワー数は20万人を超え、動画再生数は4000万回を突破、その人気は中国、アメリカ、ヨーロッパなど海外にも広がっている。2016年、Google主催「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展――無中生有的沒有用部屋in台北」を開催、2万5000人以上の来場者を記録した。Awwwards Conference Tokyo 2020、eAT2018 in KANAZAWA、アドテック2016東京・関西などで登壇。「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択。最新刊に『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』がある。