また、そうした新たな感染症のうちの多くが、「動物由来」だといわれている。発生源である動物から、直接または間接的に人にうつる感染症だ。過去30年に発生した新たな感染症のうち、6~7割が動物に由来すると示す研究もある。

 02年に発見された重症急性呼吸器症候群(SARS)はコウモリ(またはハクビシン)、12年に発見された中東呼吸器症候群(MERS)はラクダのコブが感染源だとされており、この二つも動物由来だ。新型コロナウイルス(COVID-19)についての詳細は現在調査中だが、現時点ではコウモリに由来するとみられている。

 ただこれらは全て、すでに発見されたもの。実は、今後人間が感染してもおかしくない“未知のウイルス”はもっと莫大な数に上る。

 政府間組織IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)のリポートによれば、哺乳類、鳥類が保有し得る未知のウイルスは170万種、そのうち最大で85万種は人間に感染する可能性があるという。今回ほどのパンデミックになるかどうかは分からないが、また新たな感染症が発生し、人間に感染が拡大する潜在的なリスクは十分に存在しているのだ。

動物由来感染症が増加した
「生態系」に関する二つの要因

 ではなぜ、動物由来感染症が増加しているのか。

 地球上の生物多様性を守る活動をしている世界自然保護基金(WWF)は、生態系に影響を及ぼす二つの要因が関係しているのではないかとみている。

 その一つが、森林破壊が急速に進んでいることだ。直接的な関連性は解明しづらいものの、森林破壊が感染症発生リスクに関わっていると思われる要因は、森林破壊が生態系に多大な影響を及ぼし得る点にある。森林がなくなることは、そこにいた生き物の生息地が奪われてしまうことを意味する。

「ある種が絶滅してしまったり、数を減らしてしまったりすることは、その種に依存している他の生き物にも影響を及ぼす。そうなると、生態系の健康が損なわれてしまうことになる」(WWFジャパン自然保護室野生生物グループ・浅川陽子氏)