日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」や新サービス「ペンギン村」の管理人を続ける、ひろゆき氏。
そのロジカルな思考は、ときに「論破」「無双」と表現されて注目されてきたが、彼の人生観そのものをうかがう機会はそれほど多くなかった。『1%の努力』では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。
「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)
そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――(こちらは2020年3月14日付け記事を再構成したものです)
奴隷のような生き方をしていないか?
僕たちは「幸せ」を感じるために「自分の時間」が必要だ。好きな趣味や家族と過ごす時間は、増えれば増えるほどいい。
それなのに、仕事が忙しくなってくると「時間がない」が必ず口グセになっていく。
自由な時間や趣味の時間を削り、楽しみをどんどん無くしてしまったら、それこそ奴隷のような生き方になってしまう。
そんな人生にならないために、1つ、有名な話をしよう。
「優先順位」を決める思考法
何をすべきかを決めるための思考法がある。
もし、僕が学生たちの前で講演会をすることがあったら、1つの話を披露しようと思っている。
ネット上で有名な「この壺は満杯か?」の話だ。
知っている人もいるかもしれないが、知らない世代の人も増えているようなので、少し長いが引用する。
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「この壺は満杯か?」の話
「クイズの時間だ」教授はそう言って、大きな壺を取り出し教壇に置いた。その壺に、彼は一つ一つ岩を詰めた。壺がいっぱいになるまで岩を詰めて、彼は学生に聞いた。
「この壺は満杯か?」
教室中の学生が「はい」と答えた。
「本当に?」そう言いながら教授は、教壇の下からバケツいっぱいの砂利を取り出した。
砂利を壺の中に流し込み、壺を振りながら、岩と岩の間を砂利で埋めていく。そしてもう一度聞いた。
「この壺は満杯か?」
一人の生徒が「たぶん違うだろう」と答えた。
教授は「そうだ」と笑い、今度は教壇の下から砂の入ったバケツを取り出した。
それを岩と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。
「この壺は満杯か?」
学生は声を揃えて、「いや」と答えた。教授は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと水を注いだ
彼は学生に最後の質問を投げかける。
「僕が何を言いたいのかわかるだろうか」
一人の学生が手を挙げた。
「どんなにスケジュールが厳しいときでも、最大限の努力をすれば、いつでも予定を詰め込むことは可能だということです」
「それは違う」と教授は言った。
「重要なポイントはそこではないんだよ。この例が私たちに示してくれる真実は、大きな岩を先に入れないかぎり、それが入る余地は、その後二度とないということなんだ」
君たちの人生にとって「大きな岩」とは何だろう、と教授は話しはじめる。
それは、仕事であったり、志であったり、愛する人であったり、家庭であったり、自分の夢であったり……。
ここでいう「大きな岩」とは、君たちにとって一番大事なものだ。
それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君たちはそれを永遠に失うことになる。
もし君たちが小さな砂利や砂、水など、自分にとって重要性の低いものから自分の壺を満たしていけば、君たちの人生は重要でない「何か」に満たされたものになるだろう。
そして大きな岩、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い、その結果それ自体を失うだろう。
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さあ、どうだっただろう。
人生において何を優先させるかは、一度じっくりと考えておいたほうがいい。
自分にとっての「大きな岩」はなんだろう?
先ほどの話は、あなたにとっての「時間の使い方」を教えてくれる。
「大きな岩って何だろう?」
つねにそれを問いかけてみよう。
そしてできれば、言語化して人に伝えるのがいい。
「私にとって『食事』が重要なので、テキトーなお店の飲み会には行きません」
「年に1回は『海外旅行』に行きたいので、前もって休みを宣言します」
「何よりも『子どもとの時間』が大事なので、17時には必ず帰ります」
こういうことは、堂々と表明しておいたほうがいい。もし何かを言われても、言い返せるように理論武装しておいてもいいかもしれない。
優先することを決めて、そのとおりに動く。
それこそが、毎日を幸せに生きるコツだ。
僕にとっての「大きな岩」はこれだ
この話をすると、「ひろゆきさんにとっての大きな岩(大事なこと)はなんですか?」と聞かれることがある。
僕にとっての大きな岩は、「睡眠時間」だ。
遅刻しようが何をしようが、「いま、寝たい」という気持ちを一番大事にしている。遅れてしまって後で怒られたら、土下座してでも謝る。
そして、そのことは知人や友人、仕事相手にも、堂々と宣言している。
その代わり、ちゃんと睡眠時間を取ったら最高のパフォーマンスを出すように心がけている。議論やアイデア出しでは妥協しないし、頭をフル回転させるようにしている。
すると、人から見るとムラッ気がないように見えて、「あの人は優秀だな」と思われてトクをするのだ。
まさに僕にとっての「1%の努力」の例だ。
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。新刊『1%の努力』(ダイヤモンド社)を刊行。