株式市場では、「減益」、つまり昨年度と比較して利益が減少してしまうことをすごく嫌がります。事業が好調だった企業の業績が一転し、減益に転じるなどと報道されると、株価が大きく下落するというのはよくある話です。

 減益は増益に比べると株式投資にとって残念な状況ではありますが、そこまで悲観的になる必要はありません。なぜなら、減益であっても当期純利益が出ていれば、株主資本を積み上げることができるからです。

 私自身、この意味に気づくまでにずいぶん時間がかかった気がします。自分が機関投資家時代に担当し推奨していた企業が減益になると発表した際に、株価は決まったように大きく下落したものです。そして、そのたびにがっかりしたものです。

 一方で、日本株のブルーチップ投資で成功した投資家は、減益の決算発表を見て、「絶好の買いのチャンスが来ましたね」と喜んでいました。減益でも当期純利益を計上できれば株主資本は増加するので、満足はしないけれども、とりあえずはよしとするのです。

 株式投資でよく目にするROE(株主資本比率)は、当期純利益を株主資本で割った値です。ROEを見れば、株主資本がどの程度の割合で増加していくのかがわかります。

 たとえば、ROEが10%の企業であれば、1年たつと株主資本が10%増えていることになります。毎年ROEで10%を実現できる企業だとすれば、約7年で株主資本は2倍になります。

 しかし、当期純損失となれば、過去に積み上げた株主資本を棄損してしまいます。ROEもマイナスです。過去に赤字になっている企業の将来は、投資家から見ると、途端に読みにくいものになってしまうのです。

営業利益率を比較して
ビジネスモデルの強みを探してみよう

 さて、利益率についてはどう見ればよいでしょうか。利益率については2つの見方ができます。

・利益率は高ければ高いほうがいい
・利益率が高いのにはわけがある

 利益率にはさまざまなものがありますが、通常の事業をする中での収益性として、ここでは営業利益率を見ていきます。営業利益率の水準は高ければ高いほうがよいです。

 日本の製造業は不思議なことに、リーマンショックの前には、「営業利益率でとりあえず5%を目指す」という時期がありました。

 しかし、5%程度の水準では、為替レートが大きく変動するとか、需要が減退し工場の稼働率が短期的に落ちたりすると、あっという間に営業損失となってしまいます。こうなると、経営者として手を打とうにも選択肢は限られてきます。