「リーダー陣がV2MOMの作成のために行う議論もライブ配信やビデオによって誰でも見ることができ、社内SNSで誰でも質問や意見することが可能。また、誰でも全ての社員のV2MOMを検索することができる。その結果として組織全体の賛同や意思統一がもたらされるので、やらされ感がなく、信頼されているという意識も生まれると考えている」(鈴木氏)

 もう一つオープンにされているのが、従業員サーベイの結果だ。これは3人以上の部下がいるマネジャーに関する調査で、彼らの評価の結果を詳細なコメントは除いた形で、誰でもどこからでも検索することが可能になっている。

 情報がオープンということは信頼につながる一方で、責任感や緊張感も負わなければならなくなる。それも組織と個人の成長につながっているといえるだろう。

新入社員研修は約660時間!
特に充実した営業系社員の研修

「外資系企業の中でも、特に恵まれているのではないか」と鈴木氏が自負するのが、従業員教育だ。同社のコアバリューには「カスタマーサクセス」があるが、同社のビジネスはサブスクリプションモデルになっている。そのため、顧客は導入のハードルも、利用を中止するハードルも非常に低い。つまり、つねに顧客の成功を考えて行動しなければ、自社の売り上げ(成功)につながらない。

 そこで同社では人事部門が行う企業文化を理解する研修や、リーダー研修、マネジメント研修とは別に、営業部門が行う「サービスイネーブルメント(営業活動で継続的に成果を上げる取り組み」に関する研修が積極的に行われている。

セールスフォース・ドットコムコロナ前に行われていた中途社員向け研修の様子 写真提供:セールスフォース・ドットコム

 なんと大卒の営業系新入社員の研修時間の合計は、2020年春で約660時間(2020年春、4カ月間にわたる82営業日、124プログラム)、中途の営業系新入社員の研修は合計で約140時間に上る。その後も各社員の担当に応じた研修が多数存在するという。

「製品に関する研修、営業としてのコミュニケーショントレーニングや商談のスキルを上げるためのトレーニングなどが充実しており、オンラインで受けることが可能だ。また、社員の勉強会として、成功体験の共有なども頻繁に行われている」(鈴木氏)

 また人事部門としても、社員が研修をどれくらい受けているのかをチェックしており、成績が伸び悩んでいる人は研修を受けていないことが原因なのか、それ以外に理由があるのかなどを検証することも行っているという。