税務署の逆鱗に触れた「3つのポイント」
1つ目は、銀行に相続税対策の相談をした直後に孫と養子縁組をし、不動産を購入した点です。
アドバイスの内容や時期を鑑みると、相続税を減らすための購入であることは明白でした。驚くべきことに、国税庁は「銀行がどのようなアドバイスをしたのか」も正確に把握していました。国税庁の調査能力のすさまじさがうかがえますね。
2つ目は、銀行が不動産購入資金の貸し付けを行った際、社内の稟議書に「相続税対策目的の不動産購入」と書かれていた点です。
税務調査では、こうした銀行の内部資料までもがチェックされます。これで、不動産を購入する目的が相続税対策であることが裏付けられたのです。
3つ目は、相続が開始してから、わずか9ヵ月後に不動産を売却した点です。相続開始の3年前に購入し、相続開始後9ヵ月で売却しているという一連の流れを見ると、明らかに相続税を減らすことを目的とした取引に見えます。
この3点を総合的に見て、不動産購入の主たる目的は相続税対策であると判断されたのです。
判決文の象徴的な一文をご紹介します。
「相続税の負担を免れる目的以外に他の合理的な目的が併存していたとしても、実質的な租税負担の公平を著しく害することに変わりなく」
(1)不動産購入の主たる目的が相続税対策であり、(2)節税の効果があまりにも大きく、相続税対策をした人と、しなかった人との間で著しい不公平が生じていた。
この2点が今回の判決のポイントになっています。
今後も、たとえルールブックに従って相続税を計算したとしても、あまりにも大きな節税効果が生じるものについては、国税から否認されるかもしれません。