照れ笑いに激怒したエディ監督
エディ監督が就任したのは2012年4月のこと。
当時、日本代表はテストマッチ(国・エリアの代表同士の試合)にも勝てない惨憺(さんたん)たる状況が続いていました。それも、負けに対して言い訳をする傾向が強かったのです。
アマチュア選手を中心に構成する日本代表が強豪国に勝てるわけがない。全力を尽くしたのであれば負けても仕方がないという考えがはびこっていました。
「勝つことよりも、良い試合をすることに価値がある」
そんな状況で就任したのがエディ監督でした。彼は最初にこう宣言しています。
「日本の“負け犬根性”を根底からくつがえす」
彼の指摘した“負け犬根性”が如実に表れたのが、エディ監督が就任して初めて采配を振るった試合でした。対戦相手はフランス代表ではなく、「フランス選抜」と呼ばれるフランス代表の2軍相当のレベルです。それに、日本代表は完敗しました。
エディ監督は負けた事実よりも、日本代表の選手たちの負けの捉え方に怒り、試合後の記者会見でいら立ちを爆発させました。
引き金となったのは、当時の主将・廣瀬俊朗選手が語った試合の総括でした。このとき、廣瀬選手は日本人特有の照れ笑いを浮かべながら、試合の感想を語りました。当人にとっては何気ない、さして意味のない表情だったはずです。同じく会場にいたほとんどの記者たちも違和感を覚えませんでした。
しかし、それを横目で見たエディ監督は、顔を真っ赤にして叱り飛ばしました。
「おかしいことなんて何もないぞ! これこそが日本ラグビーの問題なんだ」
組織文化は、そこに属する人の表情や言葉など、ちょっとしたところににじみ出ます。当時の日本代表は、主将であっても負けた試合を悔しがらず、照れ笑いを見せるようなチームでした。
エディ監督はこの“負け犬根性”を根底からくつがえす変革をスタートさせました。