極限状態で露呈する組織の本質

「私たちの組織文化は○○である」とすぐ言葉にできる人は少ないのではないでしょうか。

実際、組織の中にいながら、自分たちの文化を客観的に把握するのは極めて難しいものです(自分たちの組織文化を「知る」方法は『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』の第三章でお教えしています)。

 それを知る貴重な機会が、企業が危機に直面したタイミングです。

 逆境に追い込まれると、人間の本質が見えるものです。普段は偉そうな人が崖っぷちに追い込まれると及び腰になったり、いつも頼りない人が土壇場で勇気を出したりするなど、人間の“地金”は逆境で露呈します。

 私自身、スポーツやビジネスのコーチングでは、わざと相手が精神的に追い詰められるところまで連れていって、その人の本音や弱み、こだわりをさらけ出してもらいます。

 同じように、企業も逆境に立たされると本質が露呈します。

 たとえば新型コロナウイルスの感染拡大では、予防や治療の道筋がなかなか確立されず、私たちの生活は一変しました。不安や恐怖、緊張を強いられる非日常の生活の中で、企業もその本来の姿が浮き彫りになり、平時には見えづらい組織文化が残酷なまでにさらけ出されたのです。

 たとえば、多くの職場が急いで導入したリモートワーク。日頃から強い信頼関係のある組織では、職場がリモートに移行しても、コミュニケーションの質が落ちることはありませんでした。むしろ一人ひとりが自分に合ったスタイルで働けるようになり、生産性が高まったという声も多く聞きました。

 一方で、もともと人間関係がぎくしゃくしていた職場では、リモートワークに移行した途端、上司が部下の働く様子を確認できなくなり、コミュニケーションが滞ったケースもあったようです。サボらずに自宅で働いているのか、部下を監視しようとする上司まで現れたと聞きます。

 一人ひとりの助け合いがより進んだのか、それとも互いの不信感が露呈したのか。突然働き方がガラリと変わることで表れた人間模様こそ、組織文化の一端です。

 この先も、私たちが経験したことのないような危機は次々と襲ってくるでしょう。そこで問われるのが、組織文化の強さによる人々の結束の固さです。

 普段は気にすることなく、無意識下にあった自分たちの組織文化が、逆境であぶり出されてきたことをチャンスと捉えて、自分たちの組織文化を知り、目指す姿へ変革することができるかどうか。多くの企業が岐路に立たされています。

(続きは2021年3月10日公開予定)

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