利用者の高額負担を防ぐ仕組みが必要
「公益」の観点から改革の検証を

 そもそも、電気事業における投資回収の予見性確保は非常に難しいものである。第2次世界大戦後、世界各国で電力需要が急増したが、旧西ドイツを除く欧州諸国は電気事業の国有化で、旧西ドイツは、投資援助法や償却方法の変更などで対応した。

 その点で日本は、発電から送電に要したコストを全て電力価格に転嫁する「総括原価方式」と、強力な値上げによって設備投資を行ってきた。電力需要の増加局面でも、各国は電源の投資回収の予見性確保に試行錯誤を続けてきた実態がある。

 新電力もまた、こうした取り組みと無縁ではいられない。小売り電気事業者は今、(1)電力インフラを支える費用を負担、(2)脱炭素に向けた新たな電力システムの構築費用の回収、(3)安定的な価格での需要家への電力供給――の3つの役割を背負っており、特に新電力にはそれらの効率化が期待されている。

 今年のJEPXでの価格高騰で「電力小売りの全面自由化が後退してしまう」との声も上がったが、むしろ新電力は、安定供給と効率的なインフラ形成を両立させる役割を担うべきだ。

 また、今回の日本における需給逼迫や、テキサス州における電力危機では、電気の利用者に高額の電気料金が請求される事例が出ている。

 英国でOfgem(ガス・電力市場規制庁)が採用しているプライスキャップ(小売価格における価格上限規制)のような制度導入の検討が必要になるだろう。

 改めて指摘しておくが、電力は私たちの生活を支える基盤である。

 かつて電気事業は「公益事業」と見なされており、2000年の中央省庁再編まで、経済産業省資源エネルギー庁の担当部局の名称は「公益事業部」であった。

 今日では「公益」の言葉を見かけることは少なくなった。電気事業の不確実性や脱炭素の社会的要請を鑑みると、電気事業における公益性を再評価すべき時期に来ているのではないだろうか。電力システム改革もそういった観点で検証されるべきだ。

 今後、脱炭素目標の達成に向け、新電力を含めた電気事業に関わる全ての事業者に対して「公益的機能」が求められていくことになるのではないか。

【電力システム改革とは】
2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、電力需給が逼迫したり電気料金が値上げしたりして、従来の電力システムの課題が顕在化した。電力の安定供給、電気料金の抑制、需要家の選択肢拡大の3つを目的に、政府が電力システム改革に着手した。主な改革は次の三つ。
▼電力需給を全国エリアで調整する電力広域的運営推進機関(OCCTO)の設立(2015年)
▼家庭部門を含めた電力小売り全面自由化(2016年)
▼大手電力会社送配電部門の法的分離(2020年)