昨今、家庭内の家電をスマホやスマートスピーカーで操作するスマート家電がIoTブームの中で普及してきている。このコンセプトはかなり早くからパナソニックが提唱してきたものだ。しかし欧米のマーケットでは、スマート家電の元祖はサムスンやLGだと思われている。
サムスンやLGはパナソニックよりも後からスマート家電を製品化したのだが、欧米市場にパナソニックの冷蔵庫やエアコン、洗濯機は存在しておらず、多くの消費者は初めてサムスンやLGでスマート家電を知ることになった。
せっかく研究開発投資を行っても、主に日本市場からしか投資が回収できていないのが、日本の総合家電メーカーの実態である。
足もとで日本メーカーに
追い風が吹き始めた理由
しかし、昨今の状況は日本メーカーにチャンスが来たことを示している。韓国では4年にわたる文在寅政権の反財閥的経済政策によって、サムスンなどの大企業の経営が国内政治に足を引っ張られた格好になっている。
サムスン電子のグローバル戦略は、独立した事業部を多く抱える総合メーカーでありながら、社長直轄の未来戦略室という戦略部門が、事業部ごとの個別最適ではなく総合メーカーとしてのサムスンブランドのブランド力向上という全社的な視点から、世界各地域の商品戦略を担ってきた。しかし、この未来戦略室は2017年に廃止に追い込まれ、戦略室の経営幹部は辞任している。
また、韓国の財閥企業は、度々不祥事を起こすなど問題点も存在しているが、ファミリービジネス特有の長期的で力強いリーダーシップによって、首尾一貫した戦略的行動が採れるメリットがあり、こうしたトップダウンの軍隊式経営が韓国企業の成長を支えてきた。しかし、ここにきてサムスンのトップ・李在鎔副会長が逮捕起訴され、実刑判決を受けている。この逮捕が妥当かどうかはここでは議論しないが、司令塔をもぎ取られたサムスンと戦うとしたら、今が絶好のタイミングと言えよう。