たとえば以下のようなケースである。
発言の際の立場が常に「私」であって、私が学生のころは…、私が購入者として思ったことは…といった内容の発言しかしない。もちろん、一個人の意見も貴重ではあるが、それが何らかのカテゴリーを代表していなければ、会議の場での意見として、尊重すべきなのか、単なる一個人の意見(感想)として流せばよいのか分からない(ただし、討議の開始直後に、もっぱら場を温めるという意味でこのような発言があるのは歓迎されるべきである)。
資料の中にある略語(たとえば〈KPI Key Performance Indicator〉など)が分からないから意味を教えてほしいと質問し(それはOK)、それだけでは済ませずにこんな横文字の略語を使うな!と攻撃する。事前にちょっと調べてくればいいだけの話なのにやってこない(外部を交えた会議で資料に社内用語が書かれている場合はもちろんNGであるが)。
自分が所属している、または過去に所属していた団体の立場や影響力と、今会議をしている団体の立場や影響力との差異を考慮することもなく、自分の世界の常識を押し付ける人もいる。社外の会社の会議に出て、「そんなこともやっていないのか」「普通、このくらいはやるもんだろう」と吐き捨てるようにおっしゃる偉いお方にも何度かお会いした。
自分の専門領域における正確性に過度に拘泥し、議論の本題でないところに多くの時間を費やす人もいる。細かい法や技術の解釈の違いを言い出したり、微に入り細をうがった厳密な分類を語りだして、議論を迷走させたりする。
思考枠組みの不備や評価基準の不足などについて、全否定するだけで、代替案も出さず、ただ文句を言い続ける。
会議の進行プロセスに無頓着で、そろそろ結論を出す段階に入ろうとしているにもかかわらず、「そもそも論として、思考の枠組みに間違いがある」などと言い出す(もちろん、司会者の進行が下手で、段階が明確に示されなかったためにタイミングの悪い発言が生まれることはある)。
あるいは、否定的、攻撃的に発言することが正義だと考えていて、建設的な方向に話を向かわせない。
はたまた、発言の目的が、特定のステークホルダーの権益獲得だけに限定されていたり、単純にその目的が、自分が目立つことであったり、とりあえず発言したというアリバイ作りであったり、相手をおとしめることであったりという場合もある。
このような発言は、状況によって許容される場合もあるだろうが、できれば避けて通りたい「わきまえない」発言ということになるだろう。言わずもがなだが、性別、年齢、属性などとは関係がない。その人自身が、問題をどのような思考枠組みでとらえるか、何を争点とすべきか、全体シナリオのどのあたりに位置するのかなど、全体と個の関係性をしっかり把握し、個別の事項を目的遂行に向けて統合する思考能力を持ち合わせているかどうかという問題である。
目の前の議論のテーマについて直接的に考えながら、同時にもう少し引いた視点で、目の前の議題や発言が、この会議全体の進行と最終的な結末に向けてどのような意味を持つのかを考える。本来は、そのような思考と言動ができるかどうかこそが、重要な会議体の構成メンバーになれるかの資格基準なのであるが、皆さんの会社では果たしていかがであろうか。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)