「やりたいこと症候群」になっていませんか?

「お金持ちになるための方法」について、ここまでわかりやすく語られていた本が、いまだかつてあったでしょうか。『15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』が発売早々、話題を呼んでいます。「15歳から学ぶ」と謳われているとおり、とてもわかりやすく書かれていますが、見くびってはいけません。ベテランのビジネスパーソンが読んでも唸る内容なのです。「もっと若いときに読んでいれば……」と呆然とする人が続出中です。著者である奥野一成氏は、プロの投資家から約4000億円の資産を預かり運用実績を上げ続けるファンドマネージャー。農林中金バリューインベストメンツCIO(最高投資責任者)として数々の企業の盛衰を見てきた「お金のプロ」です。今回はそんな奥野さんにキャリアアップのコツについて聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、撮影・疋田千里)

すぐに転職したがる人は「何をやるか」にこだわりすぎている

──正直、読んでみてびっくりしたんです。『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』というタイトルだから、お金や投資の話しか出てこないものだと思っていたのですが、「毎日のあらゆる物事は投資である」と書かれていて。今まで抱いていた「投資」の概念がガラッと変わりました。

奥野一成(以下、奥野):私は、広い意味での投資とは「現在の資産(時間、才能、お金)を投下することで、将来的により大きな資産(時間、才能、お金)を得ようとすること」と定義しています。お金だけじゃないんですよね。3つの資産をどう使えば、自分という道具をより高めていけるだろう? という自己投資の視点を持つだけでも、日々の選択や行動は変わってくるでしょう。

──情報量の多いビジネスパーソンは、現在の資産をどう使うべきか、迷いがちなのではないかと思います。とくにキャリアの選択は、今後の人生を大きく左右してしまうので、失敗したくないと思う人が多いのではないかなと。30代の私の友人でも、「やりたいことがわからない」「今の会社でのんびり働き続けていいんだろうか」と悩んでいる声をよく耳にします。「転職するべきか/今の仕事を続けるべきか」を見極めるポイントはありますか?

奥野:うーん、私が見る限り、「転職したい」と言っている人のほとんどは、そもそも「何をやるか」にこだわりすぎなんですよね。

 たとえば銀行に入った社員が「事務作業をやるために銀行に入ったんじゃない。資産運用をやりたいからここに来たのに!」と会社に不満を抱えて転職するとか。ただ、そういう人って、どこに行っても自分のやりたいことは絶対にできないんですよ。世界昔話の『青い鳥』みたいなものですよね。青い鳥を必死で探し回っているうちは、いつまでたっても捕まえられない。

 つまり、「何を」にこだわっているあいだは、自分のやりたいことなんて見つからないし、できない。「何をやるか」よりも「どうやるか」「どう働くか」にこだわるべきなんですよ。

「やりたいこと症候群」になっていませんか?奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実戦する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は約4000億円。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』 『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』など。