何のおかげで今があるのかを、
共通認識として持つことから始める
ビジョンの検討の際には、少なくとも創業から今に至るまでの売上、利益を基本とした事業内容の変遷と、何が発展をけん引したか、何が良い意味、悪い意味で転機をもたらしたのか。それはなぜなのかを「見える化」した、いわゆる「時代分析」を押さえることから始まります。
特に、ある程度の歴史のある企業になると、今に至る事業の変遷が、成功・失敗の因果についての言語化を伴って残されていない場合や、経営の変遷のデータが失われていることもあります。
何より重要なのは、きれい事ではない、事業の成長をけん引した努力について語り継ぐ人が、ビジネスの最前線はおろか、社内にもいなくなっていたりすることです。
・何が、今に至るまで、成長のけん引をしたのか
・その時々に、何が市場から評価されていたのか
・その時々に、何が発展のトリガーとなったのか
・それらの判断の際に、トップが大事にしていたものは何なのか
・これまでの失敗で、得られた学びは何であったか
これらを、「時代分析」の中で、売上と利益の変化にマッピングさせて、何のおかげで今があるのかを、共通認識として持つことから始めないと、個人の頭の中に残っている印象の強かったことばかりが強調され、それが議論のスタートになってしまいます。
また、頭の中にある情報だけでビジョンの議論をすると、参加者の中にある「夢」や「願望」をもとに話がなされるため宙に浮いたような話になることがあります。
そこに、自分の行ってきたことを正当化したい絶対的権力者であるワンマントップなどの想いが入り込んでくると、もうその場限りで終わらせたい、ビジョンとは呼べない代物に仕上がっていくことになります。
ビジョンの議論を行うにあたっては、できるだけファクト(事実)に沿って、事業の実態とその背景を押さえた、過去と現状の正しい認識をベースに置いて行うことが重要です。
事実を起点にしていれば、その解釈についての議論を行うことができます。事実としてその裏取りを行っていけば、仮に食い違いがあっても多くの因果が明確になり、自分たちの今の立ち位置が明らかになってきます。