「見える化」をしていくと、数千万円レベルの機会損失が
ボロボロと見えるようになる

 また、衣料や靴などのファッション雑貨が複数店舗に展開されている場合、帳票上はまだ在庫があっても、その実、SやXLなどのいわゆる「端サイズ」ばかりで、売れ残りだけが店頭にあることもあります。

 あるメンズアパレルの会社のトップは、
 「うちの店は、新宿歌舞伎町のホストに人気があるのです」と得意げに話をしていました。

 しかし実際にバイヤーに確認すると、そのような品ぞろえをしているつもりはないとの答えです。

 ここで大体、何が起きているのかは想像がつく方もいると思います。この会社では、「ド」が付く定番の売れ筋である、普段使いしやすい白のビジネスシャツの少しおしゃれなバリエーションの一品番当たりの発注数も、奇をてらったデザインのシャツの発注数と大きな差はなかったのです。

 結局、ベーシックなものは2週間ほどの短期間でほとんどの店で欠品状態となり、この店では1年のほとんどが、奇抜のデザインのシャツばかりが常に陳列されている状態で、それらがホストたちに受けていたのです。

 この手の事例は、どこの小売業でも大なり小なり起きているのですが、日々使っている帳票には、この部分が見えるような工夫がなされていないために、バイヤーは気が付かない、あるいは気が付いても黙ってさえいれば表面化しないのです。

 他社でも、この手の「見える化」をしていくと、数千万円レベルの機会損失がボロボロと見えるようになり、売上の向上策にダイレクトにつながるものです。

 この「見える化」は、たとえば、単品の消化率の推移曲線を示すと一目でわかります。複数の店舗を展開している場合は「端サイズ」にばかりになると消化率は数十%でも横ばいになってしまうことがあります。これは発注数が少なすぎるだけではなく、サイズ別の発注バランスの悪さも影響している可能性があります。

 なお、欠品の発生が表面化すると、社長や役員に怒られると思っている商品部長などの上層部のマネジャーが、これらが「見える化」されることを極端にいやがることがあります。