融通が利かなすぎる人をどうやって動かすか

 融通の利かないタイプの人に、こちらの事情をいくら訴えたところでなかなか通じず、イライラするだけである。状況に応じた臨機応変の判断が苦手なのだから、こちらの理屈が通るわけがない。

 そこで大事なのは、相手の理屈に合わせて対応することである。相手が自己防衛に走っている場合に、その人が特に気にするのは「自分が責任を問われたら大変だ」ということに尽きる。そのような事態は何としても避けたい。そこに攻略のヒントがある。

 つまり、このタイプを動かそうと思ったら、責任を問われるような事態の回避を保証し、安心させる必要がある。

 ここは臨機応変に行動すべきだし、それによるリスクはないと思うのに、上司がどうでもいいような手続きにこだわり、身動きが取れないといったケースであれば、上司の責任回避を保証してあげることだ。例えば前例があれば、それを持ち出すことで、少しは安心するはずだ。

 さらに、前例があってもなくても、「私が責任を負いますから」というように、責任をこちらが負うことを明言し、相手の責任回避を保証するのもよい。

 それでも、「そう言われてもなあ。監督責任もあることだし」などと抵抗することもあるだろう。そのようなときは、

「私が勝手にやったことにしてください」
「知らなかったことにしてください」

 というように、いざというときに上司が責任逃れの言い訳ができるように配慮する。つまり、向こうが「認めた」ということにならないようにするのである。

 その上で、リスクがまったくないことを強調する。責任も問われず、リスクもないとなれば、例外を認めることへの抵抗感が軽減される。それによって、ささいな規則や手順による縛りを緩めることができる。

 ここまでしても抵抗された場合は、「もし規則にこだわったために商機を逸したら、『なぜもっと臨機応変に対処できなかったのか』と責められるかもしれない」とほのめかし、暗に脅しをかけてみる手もあるだろう。責任を問われることを極端に恐れるタイプゆえに、最後の切り札になる可能性もある。

 この時重要なのは、相手のコンプレックスを刺激しないことだ。コンプレックスが刺激されると、「こんなヤツの思い通りには絶対にさせない」といった思いに駆られ、さらにかたくなな態度になりがちだからだ。こうした事態を避けるためにも、融通の利かない相手を軽んじるような言動は厳に慎むようにしたい。