文系、理系はこんなに違う
採用手順の現実とは
また、文系と理系の学生に対して、企業のアプローチは異なります。
文系採用は、「母集団形成型」の採用といえます。つまり大人数の中から少しずつ段階を経て逆三角形型に数を絞っていくのです。1万人が応募したES(エントリーシート)の中から5000人のシートを通し、筆記試験で2000人にする、という具合です。
この方式では、特に企業にとっては文系超優秀層の獲得が難しくなります。そのため、「ささやき」でこれという人材には早めに内定を伝えておくのです。とはいえ、7、8月に開催したインターンシップから翌年3月1日の応募意志確認、エントリーシート解禁まで学生を押さえておくのは至難の技です。コロナ禍前は学生に定期的に会って繋ぎ止めておけばよかったのですが、今はそういうわけにもいかないからです。
大手企業、超優良企業の場合に限りますが、理系採用ではこれとは違い、優秀層(研究開発部門)を一本釣りすべく、大学の研究室経由でインターンシップに応募させるのが一般的です。すでに研究室単位にまで絞り込まれているので、研究室からは1人だけがインターンシップに応募することが多いようです。これは産学連携の一環でもあります。たとえばとある大手メーカーでは、ある大学の研究プロジェクトに5年間で100億円を出資する代わりに、インターンの大学院生を何人受け入れるなどといったことが、予め決まっている場合もあります。
ただし、中堅以下の理系採用企業は文系と同じで、母集団形成型の採用をしています。本当はミスマッチを防ぐためにも長期でのインターン受け入れを望んでいますが、コロナ禍でなかなか実施が難しい状況にあります。
少しでも早く内定がほしいのは誰でも同じですが、企業が優秀な人材を確保するためにどのように動いているのかを、まず知っておくことが大切です。企業の動きを頭に入れ、分析したうえで行動することが、本当に自分に合った企業に内定するための近道なのです。
(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)