地中海性気候でブドウが育つ理由

 果樹は水利(すいり)に恵まれたところでの生産に向いていません。必要以上に土壌中から水分を吸い上げてしまうからです。

 甘みを凝縮させるためには、ある程度水利に恵まれない乏水(ぼうすい)地のほうがよいのです。扇状地で果樹栽培が盛んな理由と同じです。扇状地の中央部にある扇央部(せんおうぶ)では河川水が伏流して水利に恵まれません。

 こうして地中海性気候下では果樹栽培が盛んに行われるようになりました。ブドウやオリーブ、オレンジ、レモンなどは地中海性気候下での生産が盛んです。

 さてここで、冒頭の図をもう一度見てください。

 世界で地中海性気候が展開する地域はどこでしょうか? 具体的な国を挙げると、フランス、イタリア、スペイン、アルジェリア、南アフリカ共和国、オーストラリア、アメリカ合衆国、チリなどです。

 世界的に有名なワインの生産地ばかりですね。アメリカ合衆国は広大な国土を有していますが、地中海性気候が展開しているのはカリフォルニア州周辺だけです。アメリカ合衆国のワインの生産量の90%がカリフォルニア州というのも理解できる話です。

 地中海性気候が展開する地域でこそワインが生産される。ワインを飲みながら語るウンチクの1つに加えてみてはいかがですか?

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宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
代々木ゼミナール・地理講師
鹿児島県出身。「東大地理、センター地理」などの講座を担当する実力派。一部の講師しか担当できないオリジナル講座を任され、これらは全国の代々木ゼミナール各校舎・サテライン予備校にてサテライン放映(衛星通信を利用して配信)されている。「地理」を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。