クックパッドコーポレートブランディング部本部長の小竹貴子さんが上梓した『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』には、料理が根本から得意になる考え方が書かれています。『発達障害サバイバルガイド』の著者・借金玉さんは、小竹さんの料理にはおいしくなる「しくみ」があるといいます。料理に苦手意識を持っている人が陥りがちな習慣と、料理が上達するコツを語りあってもらいました。(取材・構成/杉本透子) 

発達障害の僕が発見した「料理のうまい人と下手な人」をわける超意外な一つの行動

すいすい料理をするためには、○○を全部出す

小竹貴子(以下、小竹) 料理が苦手な方におすすめしたいのは、「料理を始める前に材料と調味料を全部出す」ことです。本にも書いたのですが、料理中って意外に無駄な動きをしていることが多いんです。野菜室から野菜を取って、野菜を切ったら今度は冷蔵室を開けて調味料を取ってと。先に材料を全部出すと、何が必要でどう進めるかという理解ができます。「見通しをつける」というんですけど。自分の中でゴールのイメージが見えていると、けっこう効率的に進められる。

借金玉 僕らのような人間がいちいち冷蔵庫を開け閉めしていたら、40分でできることが3時間くらいかかってしまいますね(笑)。マルチタスクを処理できるように、まずは見通しをつけようということですね。

小竹 料理ってマルチタスクですよね。毎日料理している人は自然にそれができるのですが、初心者だと同時進行がすごく難しい。すべての品が温かい状態で仕上がるためには、見通しをつける練習をしないといけないです。

借金玉 僕は大学生のときレストランの厨房で働いていたのですが、モタモタしているとシェフがレードル(おたま)で殴りかかってきて(笑)、本来苦手なマルチタスクが料理に限って多少出来るようになった気がします。ただ、仕事だと全くダメで、今も3つ以上のタスクが同時に降ってくると破滅してしまいます。

発達障害の僕が発見した「料理のうまい人と下手な人」をわける超意外な一つの行動小竹貴子(こたけ・たかこ)
クックパッド株式会社Evangelist、コーポレートブランディング部本部長
1972年石川県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオでWEBディレクターを経験後、2004年有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。広告主とユーザーのwin-winを叶えた全く新しいレシピコンテストを生み出す。2006年編集部門長就任、2008年執行役就任。2010年、日経ウーマンオブザイヤー2011受賞。2012年、クックパッド株式会社を退社、独立。2016年4月クックパッドに復職、現在に至る。また個人活動として料理教室なども開催している。シンプルでおいしく、しかも手順がとても簡単なレシピが大人気で、生徒から「料理のハードルが低くなった」「毎日料理が楽しいと感じられるようになるなんて」の声多数。日経BPから上梓した『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』が現在7刷のロングヒットに。
発達障害の僕が発見した「料理のうまい人と下手な人」をわける超意外な一つの行動借金玉(しゃっきんだま)
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠如・多動症)と診断されコンサータを服用して暮らす発達障害者。二次障害に双極性障害。幼少期から社会適応がまるでできず、小学校、中学校と不登校をくりかえし、高校は落第寸前で卒業。極貧シェアハウス生活を経て、早稲田大学に入学。卒業後、大手金融機関に就職するが、何ひとつ仕事ができず2年で退職。その後、かき集めた出資金を元手に一発逆転を狙って飲食業界で起業、貿易事業等に進出し経営を多角化。一時は従業員が10人ほどまで拡大し波に乗るも、いろいろなつらいことがあって事業破綻。2000万円の借金を抱える。飛び降りるためのビルを探すなどの日々を送ったが、1年かけて「うつの底」からはい出し、非正規雇用の不動産営業マンとして働き始める。現在は、不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。最新刊は『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』