中国とうまくビジネスする道を模索
過剰な忖度で、チャンスを逃す日本企業も

――中国との貿易額には伸びが見られますね。

杉田 中国海関(税関)総署が、4月13日に発表した2021年第1四半期(1~3月)の対米輸出額(ドル建て)は1192億ドルで前年同期比74.7%増、輸入は465億ドルで前年同期比69.2%増となりました。対日輸出額は387億ドルで30.6%増、輸入額は476億ドルで28.3%増になりました。

 一方で、私は日本で経済産業省産業構造審議会に提出された報告書に注目しています。通商政策局・貿易経済協力局では2021年5月に「対外経済政策を巡る最近の動向」をまとめましたが、ここにグローバル・バリューチェーンの構築について取り上げられています。日本として調達先の集中度の低減に取り組むとともに、米国をはじめとする有志国との信頼を軸としたグローバルサプライチェーンの構築に取り組むべきではないか、としています。

 グローバルサプライチェーンについては、経済安全保障と一体として捉えた国際競争力の強化を図るべきだと考えます。今後、生産拠点の多元化、代替技術による脆弱性の克服と重点技術の開発を通じて、日本が優位性を持つ分野を強化することが大切です。重要技術については有志国との連携も含めた研究開発や設備投資を促し、企業に対しては、機微技術管理に関する管理の徹底を求めています。

 その半面、報告書は法令順守を超えた“過度な忖度”については注意を促しています。「過度な忖度で事業機会を失わないように」ということです。実際に最近、ファーウェイに工作機械を納めている日本の企業が、それをとりやめたことがあり、ドイツ企業に何十億円ものビジネスを持っていかれたという話もあります。忖度するあまり、ビジネスを欧米の競合他社に取られてしまった事例です。

 日本の一部の企業では今、過剰に忖度し、中国に対しても過剰に反応しています。米中の狭間でしかるべく立ち振る舞いながら、決してビジネスチャンスを失わない、それが日本の歩む道だと思います。

――中国の日系企業は好調だと聞いています。

杉田 はい。自動車も電機・電子も好調で、日本から中国への輸出も増えています。eコマースも伸びています。化粧品、サプリ、大衆薬など、訪日旅行ができない分、日本テイストのものが輸出ベースで売れています。上海では今年4月、三井不動産が開発した「ららぽーと」が開業しましたが、現在、中国では商業施設や文化施設にオフィスビルなどが合体した複合的な産業パークの開発に力が入れられています。

 興味深いのは中国大手デベロッパーの万科の活動です。同社創始者である王石氏は日本文化が好きで、来日のたびに座禅を組み、茶道では裏千家と交流を持つなどしています。万科は開発する物件の中に茶室を設けたい、などと言っており、こうしたこともまた契機となって日本文化が広く紹介されていく可能性が出てきています。さらに、万科は日本企業との連携により、中日産業シティーを瀋陽に造ることを提案していました。

 結果として、瀋陽市での入札によりPFI方式(民間の資金とノウハウを活用し、民間主導で公共サービスの提供を行うこと)で万科が請け負いました。商業施設やインキュベーション施設(スタートアップなどの起業家を支援する施設)のみならず、日本庭園、アニメ、漫画など、日本のコンテンツに関連した施設や伝統的な茶道や華道の施設も立地させたいと考えており、日本の地方自治体、企業や日中経済協会にアプローチしています。