紹介していただくのは
「一~二人」で十分だと伝える
お客様にとってみれば、紹介を断ることにも心理的な負荷がかかりますから、”その場しのぎ”で「紹介してもいいよ」とおっしゃることがあるのです(営業マンは、そういうお客様の心理にも配慮する必要があるということでもあります)。
僕の経験から言えば、20~30人くらいのお名前と電話番号をバーッと教えてくださるようなお客様に限って、紹介してくださったはずの方々と実際に繋げてくださることは少ないものです。
例えば、個人情報の問題もありますから、必ず、お客様本人から紹介してくださる皆様に一報を入れていただいて、僕からその方々に連絡がいくことに対してOKを取り付けておいていただく必要があるのですが、「いや、いいですよ。電話かけちゃってくださいよ。そのかわり、僕の名前は言わないでくださいね」などとおっしゃる方がいます。
あるいは、「わかりました。じゃ、僕から連絡しておきますね」と言っておきながら、その後、僕が何度確認しても、ご紹介してくださるはずの方々に連絡していないお客様もいらっしゃいます。これでは、僕としては一歩も前に進めないわけです。
だから、僕は、「ご紹介いただくのは、一人か二人で大丈夫です。本当に大切な方をご紹介いただきたいんです」とはっきり伝えるようにしていました。そのようにお伝えすると、ほとんどのお客様は、「いい加減な対応ではダメなんだな」と思ってくださいます。
なかには、僕のそうした要望を負担に感じられるのか、途端に口が重くなってしまう方もいらっしゃいますが、その場合には、しつこくお願いするのは避けるようにしていました。そんなことをしてもお客様から嫌われるだけですし、たとえ紹介していただけたとしても、”その場しのぎ”の域を出ることはほとんどないからです。
紹介してほしい「人物像」を明確に伝える
そして、真剣に考えてくださるお客様とは、コミュニケーションを深めていきます。
ただ、ここですぐに紹介してくださる方の名前が出てくる人はほとんどいらっしゃいません。ほとんどの方は、「う~ん……」と言いながら考え込まれます。それは決して悪い兆候ではなく、それだけ真剣に人選をしてくださっている証拠。だから、僕は、その思考をサポートするように心がけていました。
その際に、効いてくるのが、それまでの面会でヒアリングしてきたことです。
たとえば、そのお客様の家族構成についてお話を伺ったときに、お父様が経営者であったり、お医者さんであることがわかっている場合には、「相続問題」で保険が活かせる可能性がありますから、「お母様をご紹介いただくことはできませんか?」と投げかけてみるのです。
ちなみに、「お母様」というのは誤植ではありません。相続のことを息子さんからお父様に直接話すのは非常にハードルが高いので、まずはお母様とお目にかかって、お母様からお父様に話していただくほうが成功確率が高いのです。一番強いのは、娘さんとお母様がタッグを組んでお父様に話すことで、これができればお父様は必ず動きます。
あるいは、進学校に通っていた方であれば、「同級生に弁護士や医師になられた方はいらっしゃいませんか?」と聞いてみるのもいいし、学生時代に野球をやっていた方ならば「野球部の同級生で仲のよかった方はいらっしゃいませんか?」と聞いてみるのもいいかもしれません。
このように、僕は、こちらが紹介してほしいと思っている人物像を具体的にお伝えするようにしていました。少し図々しいように感じられて気後れする人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
なぜなら、お客様は「なんとか力になってあげたい」と思ってくださっているのですから、こちらの希望を明確にお伝えするのはむしろ望ましいことだと思います。しかも、お客様が紹介候補者を絞り込みやすくなるのですから、妙に遠慮せずにこちらから「ボール」を投げていくほうがよいのです。