いきなり「連絡先」を聞かずに、
お客様の「ウォーミングアップ」をする

 ただし、お客様が具体的な名前を出してくださっても、いきなり連絡先は聞かないほうがよいでしょう。

 もちろん、こちらが欲しいのは連絡先ですが、お客様にとって大切な知人の個人情報ですから、そう簡単には口にされません。にもかかわらず、急かすように連絡先を聞かれると、「うーん、やっぱりやめとこうかな……」という展開になりがちです。

 そこで、僕は、「ありがとうございます。ぜひ、お目にかかってみたいです」とお礼を伝えたうえで、名前が出た方について質問をするようにしていました。

 例えば、その方が高校時代の野球部の同級生であれば、「ポジションは何だったんですか?」「どちらの大学に行かれたんですか?」「いまはどちらにお住まいなんですか?」「食事は何がお好みですか?」などと質問を重ねていくのです。

 そして、「なるほど、すごくいい方ですね」などと前向きな反応をしながら、教えていただいたことをどんどん手元の手帳に書いていきます。このプロセスを経ることで、僕自身も紹介していただく方のイメージがどんどん明確になりますし、「ぜひ、お会いしたい」という実感も深まっていきます。

 しかも、お客様にとっても、実際に紹介するためのウォーミングアップになるのか、いろいろな質問をしたうえで、最後に「ぜひ、その方とお会いしたいです。連絡先を教えていただけませんか?」とお願いすると、ほとんどの方がすんなりと教えてくださいました。

超一流の営業マンが、お客様の「心理的ハードル」を下げる“さりげない方法”とは?写真はイメージです。 Photo: Adobe Stock

メールの「定型文」を
お客様に送っていただくだけ

 こうして、連絡先を教えていただけたら、「金沢という営業マンから連絡してもいいか?」と、ご本人から直接確認していただくようにお願いします。

 すでに述べたように、ここで紹介がストップするケースがあるので、非常に重要なポイントです。そして、お客様のご負担を最小限にするために、僕は、電話ではなくメールで確認していただくようにしていました。

 というのは、電話での連絡はお客様への負担が大きいからです。

 そもそも、親しくしている知人が相手とはいえ、いきなり「保険の話、聞いてみない?」と電話するのは難しいものです。仕事でもないのにそれができる人は、多分、すごく優秀な営業マンになれると思います。そのくらい心理的な負担が大きいことを、お願いするのは忍びないと考えたのです。

 そこで、僕のほうで、「金沢さんという生命保険の営業マンと会ってみないか? とても役に立つ情報を教えてくれるから、会って損はないよ」といった内容の定型文を用意して、「このメールを、ご紹介いただける方に送っていただくだけで大丈夫です」とお願いするようにしたのです。

 これは非常に効果的でした。

 お客様にすれば、電話で何を話すかを考える手間も省けるし、相手の方から「会ってもいいよ」というメッセージが来たら、僕をccに入れて「ありがとう。金沢さんをccに入れたから、あとは直接やりとりしてください」などと返信すれば完了。お客様の心理的な負担を最小化できるわけです。

 それに、保険営業の”素人”であるお客様に電話で説得していただくよりも、僕が練り上げたメール文のほうが「成功確率」も高いはずです。こうして、電話からメールに切り替え、その後は、LINEやメッセンジャーのグループ機能を使って、お客様からの紹介案件を着実に増やしていくことができるようになったのです。