中国での漢字の影響力は絶大
「広州HONDA」ではなく「広州本田」が良い理由

 中国でよく売れている商品に、「広本」というものがある。広本とは、本田技研工業株式会社と中国の自動車会社「広州汽車」が作った合弁会社「広州本田」のことを指すものだ。

 当初、ホンダ社内では、「広州HONDA」という漢字とアルファベットを組み合わせた表示にしようという声がかなりあった。しかし、私はメディアで再三、中国の広告関連と文字表示関連の法規との不整合問題などのリスクを指摘し、このような使い方・読み方に反対していた。

 さらに、もうひとつ「広州HONDA」という表示では懸念があった。それが、2文字に短縮するときの方向性の問題だ。「広HON」に短縮することはあり得ないから、むしろおとなしく漢字表示を使用した方がよかったのだ。結果的に、「広本」と短縮した形で落ち着いた。

 日本でのホンダの使い方と同じように、この「広本」は中国では、会社名の略語である同時に、ブランド名でもある。

 以前、中古車販売店にぶら下がっている看板には、「新広本」「老広本」といった文字が書かれているのがよく見られた。広州本田の新しいタイプの車種と古い車種のことを指す。当時、広州本田の車と言えば、「アコード(中国語名は「雅閣」)」だった時代なので、新広本も老広本もアコードのことを指していた。

 車種がたくさん増えた今、ひと昔前のように、ことは運べない。「広本」の次に雅閣や「飛度(フィット)」といった具体的なブランド名をつけないと、情報が伝わらなくなる。これで、ようやく新広本、老広本といった表現がだんだん見られなくなった。

 漢字の本家・本元の中国ならではともいえる、漢字による影響力は、中国市場を視野に入れている日本企業にとって絶対に無視または軽視してはいけないのだ。