適用範囲は利害関係者の攻防の末
年収200万円以上で政治決着した

 現在、75歳以上の後期高齢者の医療費の自己負担割合は、原則的に1割だ。ただし、年収383万円以上(単身者、課税所得145万円以上)の現役並み所得者は、すでに3割を負担している。

 今回、自己負担割合の引き上げ対象になったのは、これまで1割負担だった人の中で、所得が上位に位置する人だ。

 引き上げ議論の争点となったのは、対象にする人の年収ラインで、厚生労働省が20年11月19日の社会保障審議会(医療保険部会)で示したのが、次の五つの選択肢だ。

表:後期高齢者の窓口負担の在り方について令和2年11月19日第134回社会保障審議会医療保険部会資料1から

 1は、本人の年収240万円以上で、介護保険の2割負担の対象者の割合と同じで、約200万人が対象。

 2は、70~74歳の平均収入額を上回る水準の人で、約285万人が対象になる。

 3は、平均的な収入で算出した年金額を上回る水準で、約370万人が対象。

 4は、本人に所得税の課税対象となる所得がある水準で、約520万人が対象。

 5は、本人に住民税の課税水準を超える所得がある人で、約605万人が対象。

 この案が示された後も、利害が対立する人々の間で意見が割れた。医療団体などの診療側は、患者が受診を抑制することを懸念して、できるだけ引き上げ適用の範囲を狭めるように求めていた。一方、後期高齢者制度への支援金を抑えたい健保組合などの支払い側は、原則2割負担を提案した。また、この秋に衆議院議員選挙を控えていることもあり、政府与党内からも有権者に配慮して適用範囲を広げない声が聞かれた。だが、最終的には、与党内での話し合いで、3の平均的な年金水準である本人年収200万円以上のラインが採用されて政治決着した。

 では、75歳以上で窓口負担が2割となる所得水準と、具体的な負担増のイメージを確認してみよう。