プロデューサー的な役割を担うリーダーの配置を

 では、これからタレントマネジメントシステムを導入する場合、何から始めればいいのだろうか。

「経営者の判断で緊急度や重要度の高いものから始めるといいでしょう。

 まずはデータを集めて分析し、課題を見つけ、優先順位を付けて一つずつ改善していきます。小さくてもいいから早く成果を出し、モチベーションを高めることも成功の秘訣です。

 その際、大手企業がCHRO(最高人事責任者)を設けているように、プロデューサー的な役割を担うリーダーを配置するとスムーズな導入・運用が期待できます。

 リーダーには人事に加え、ICTや経営にも精通した人材が理想ですが、そう多くはいないでしょう。現実的には人事の人がICTを学ぶのが最も早い対応ではないでしょうか」

 人事領域の業務がクラウド化されると、経営陣への提言や各部署のマネジャーのサポートが人事のメインの仕事になる。HRテクノロジーを使いこなすため、自ら率先してテクノロジーリテラシーを高めていくことが必要だ。

「ピープルマネジメント」が従業員エンゲージメント向上のカギ

 従業員エンゲージメントの向上に努めている企業では、各部署のマネジャーにピープルマネジメント力のある人材を登用しているという。

「HRテクノロジーによる人的資本の価値の最大化」が企業の成長に不可欠な理由従業員エンゲージメントの向上に努めている企業では、各部署のマネジャーにピープルマネジメント力のある人材を登用している(写真はイメージです)

「これまでは年功序列で、『俺の背中を見て学べ』といったプレーイングマネジャー的な人がマネジャーに登用されてきましたが、時代の変化に伴い、このようなマネジメントでは人が育ちにくくなっています。

 ピープルマネジメントでは、メンバーの一人一人と向き合い、モチベーションを高めて成長にコミットし、メンバーと組織のパフォーマンスの最大化を目指します。欧米の企業では一般的な取り組みですが、日本企業もピープルマネジメント力を重視したマネジャーの登用に切り替えていくべき。メンバーの能力を発揮させるピープルマネジメントの方が業績の向上が期待できます」

 タレントマネジメントシステムの組織診断機能で分析すると、従業員の成果や意欲と相関関係が高い要因として「上司との関係」がよく挙がるが、このようなケースの組織改善方法の一つがピープルマネジメントとなりそうだ。

 コロナ禍を機にテレワークや在宅勤務が広がる中、人事や総務、経理などの連携が以前にも増して求められるようになった。

「欧米など海外では生産性を高めるため、タレントデータと財務会計システムを連携させ、従業員一人一人のコストや利益などを算出するクラウドアプリケーションの活用が広がっています。

 将来的には業績データやファイナンス、健康管理なども含め、“ワークテック”や“経営テック”という概念で連携が広がっていくでしょう」

 HRテクノロジーは、これからの企業経営には不可欠といえよう。テクノロジーの進化の波に乗り遅れないように、新しい技術やサービスをウオッチし、企業経営に積極的に取り入れていくことが大切だ。