やり抜く力の4つの要素

 ダックワース教授は、やり抜く力の要素として次の4つを挙げている。

1 Guts(ガッツ):困難に立ち向かう「闘志」
2 Resilience(レジリエンス):失敗してもあきらめずに続ける「粘り強さ」
3 Initiative(イニシアチブ):自らが目標を定め取り組む「自発」
4 Tenacity(テナシティ):最後までやりとげる「執念」

 さらにこれらを伸ばすためには、

1 興味があることに打ち込む
2 失敗を恐れずチャレンジし続ける(挑戦せざるをえない環境をつくる)
3 小さな成功体験を積み重ねる
4 「やり抜く力」がある人のいる環境に身を置く

 ことが必要だとしている。

 私が2016年にこの書籍でグリットの考え方に触れたとき、この間実施してきたワークマンの経営によく似ていることに驚いた。

 そして一つ強調したいのは、これをトップダウンで実施するのではないということだ。

『やり抜く力』の4つの要素はどれも素晴らしいものだが、他者から強要されたら巨大なストレスになる。

 昭和の時代に流行したマッチョな会社では、朝礼で「困難に立ち向かいます!」「失敗してもあきらめず続けます!」などと大声で唱和していたものだ。

 そして、上司と面談しながら「目標」を決める。

 自ら定めた目標のように思わされるが、実際には会社が定めたノルマのことが多かった。

 だから「自分で決めた目標なのだから必ず達成しろ。達成するまで帰ってくるな!」と言われると非常につらい。

『やり抜く力』を電車広告などで見かけた経営者が、本質を理解せずにトップダウンで始めたら「ブラック企業」になりかねない。

「しない経営」の最も大切な点は「社員のストレスになることはしない」である。

 頑張らないことが大切で、決して頑張ってやりきってはいけない

 普通の人が普通に働いてやりきらなくてはならない。

 誰かが死にものぐるいの努力で達成しても迷惑だ。

 なぜなら、そのやり方は後から続く人にとって再現性がなく何の役にも立たないからだ。

 社員がストレスなくやり抜くことと、「やり抜く力」を伸ばす4つの要素は密接に関係しているのだ。