お金もモノも、枠の意識を持つことが大事

――片づけられない人は、家計簿をつけたりして、お金の流れをチェックしないんですか?

石阪:家計簿をつけてる方もいらっしゃいます。でも、つけているだけ、という方が多いですね。

たとえば、本来、家計簿というのは、予算があって、いくら使って、プラス・マイナスということを記録するものですよね。それで、先月はマイナスになってしまったから、今月の予算はこれ。だから、1日に使えるお金はこれだけっていうことを考えます。

けれど、ただ家計簿をつけることが目的になっていると、予算を考えずお金は使って、何ヵ月もまえの家計簿をつけていることがあります。これではお金のやりくりはできないので、意味がないんですよね。

お片づけレッスンでよくお見かけするのが、何ヵ月も前のレシート類です。

「このレシートはなあに?」とお聞きしたら、「家計簿つをけるのでとっているんです」と言われることがよくあるんですよ。

――数ヵ月前の家計簿をつけても、あまり意味がなさそうですよね。

石阪:そうですね。予算の意識なしに、家計簿を書いているだけでは残念ながら意味がないんです。予算を立てて、使えるお金を把握して買い物をするから、お金のやりくりがうまくいくんですよね。

その考え方は、片づけと全く一緒なんですよ。

収納という枠があり、その枠を意識して、モノを取り入れるから、収納に収めることができるでしょう。

片づけもお金の管理も、自分に与えられた枠の中でやりくりすることが大切なんです。

――なるほど。家が片づくと、予算を意識できるようになって、無駄遣いが減っていくから、お金が貯まるようになるんですか?

石阪:はい。そして、やっぱり書類の整理までしっかりするということが大切です。通帳を1ヵ所に集める、保険証券を全部集める、控除の書類はここに置く、病院の領収書はここに置く……という風に全部決め、把握すること。そうすれば、お金といつでも向き合うことができますよね。

あと、「片づけるとお金が貯まる」と言うと、無駄遣いが減って節約できるから、その分増えるようなイメージがあるかもしれないですけど、実は、お金が入りやすくなる効果もあるんですよ。

片づいて身軽になると、お得な情報に飛び乗れる

――お金が入ってくる!?どういうことですか?

石阪:片づけを終えると、使える時間も増え、フットワークが軽くなるんですよね。お得な情報をキャッチすると、それにパッと乗れるようになることもあります。

例えば私自身は、何年か前に、携帯電話をauからソフトバンクに乗り換えた時に、家族全員で38万円が返ってきました。今は法律が変わってできなくなったんですけど、当時はキャッシュバックキャンペーンというものがあったんですね。そのポスターを携帯屋さんで見かけたので、すぐに必要書類を持ってお店へ行きました。

家が片づいていて、書類をパッと出して見られるか。それとも、あの書類どこに行ったかな、面倒だからまぁいいか、となるか、この違いはけっこう大きいと思います。住宅ローンとか保険もそうですよね。換えたほうが得なのか損なのかわからない。そういう時にすぐに調べられる人は、やっぱり書類がすぐに取り出せる人ですね。

――わかる気がします。でも、片づけると、どうしてフットワークが軽くなるんでしょうか?

石阪:片づけにかかる時間、モノを探す時間、家事にかかる時間、すべての時間が浮いてくるから、自分の時間が増えるんです。あと、気持ちも変わりますよね。例えば、料理をしようと思っても、流しに洗い物が残っていて、作業台にモノがたくさん出ていて、しかも汚れていたら…。

片づけてからじゃないと料理を作れないキッチンでは、やる気が出ませんよね。でも、スッキリ片づいていると、「ちゃちゃっとご飯でも作ろうかな」と、行動に移しやすいと思います。それと同じようなことが、色々な場面で起こるので、パッと行動できるようになるんです。

――そうなんですね。でも、お金にまつわる書類は、下手に捨てると大変だから放置しがちですよね。

石阪:お金にまつわる書類には、「原本を保存しておく必要があるモノ」と「データで残しておけばよい単なるお知らせ」があります。本にも書いたように、それらをしっかり区別して管理していけば、書類があふれることもないし、財産も把握しやすくなります。

家を片づけるとお金が貯まるのは「気のせい」ではなく「事実」【before】キッチンカウンターの下の棚に、書類や雑貨などが無造作に入れられている。大事な契約書と、単なるお知らせの紙が混在している状態。
家を片づけるとお金が貯まるのは「気のせい」ではなく「事実」【after】書類をカテゴリー別にファイルボックスに収納。これなら、必要な書類をすぐにパッと取り出せる。