そして、上司や先輩から重宝がられたことが、テレビ局の意思決定の部署である「編成部」への異動につながりました。

 いや、実は当時、僕は不満でした。”同期入社組”が次々とディレクターに昇進していくなかで、僕だけいつまでも「チーフAD」のままだったからです。あとで知ったことですが、僕をチーフADにしておくと現場がうまく回るから、上司や先輩が手放してくれなかったのです。

 だけど、これがよかった。チーフADは編成部をはじめ社内のさまざまな部署と密接なやりとりをする立場なので、長年チーフADを務めたことで編成部の人々とも親密な関係になることができたからです。

 そして、仲のいい先輩が編成部に異動になると、編成部長と一緒にご飯を食べにいく機会をつくってくれたりして、僕をガンガン売り込んでくれました。それで、「編成部」に引っ張ってもらうことができたのです。

「コツコツ頑張っている人」のことを
神様はちゃんと見ている

 このように、僕は「要領のよいタイプ」で、そのおかげで重宝がられることによってチャンスを掴んできたように思います。だから、どうせ仕事をするなら、要領悪くやるよりも、要領よくやったほうがいいと思っています。

 だけど、僕は、「要領のよさ」には限界があることも思い知らされてきました。結局、最後に勝つのは「要領よくやる人」ではなく、「コツコツと努力する人」であることを身をもって学ばされてきたのです。

 受験もそうでした。

 僕は、学生時代、「テストで点を取る要領」に長けていたと思います。

 基本的に授業もあまり聞かず、ノートを自分で取るようなこともほとんどなく、テスト前に優秀な友人から「上手にまとめたノート」をコピーさせてもらって、一気に頭に叩き込んでいました。おかげで”ガリ勉”をすることなく、まずまず「よい点数」を維持し続けていたのです。

 そして、京大を受験するときも、模擬試験では「A判定」を取っていましたので、コツコツと勉強をする努力をしませんでした。その結果、現役のときも、一浪して再挑戦したときも、ありえないようなミスを連発して不合格に終わってしまった。これは、本当に情けなかった……。

 一方、模擬試験では「A判定」を取っていなかった同級生たちは、見事に京大合格を勝ち取っていきました。いくら「A判定」を取っていても受験を舐めている僕は失敗して、成績は足りなくてもコツコツと努力をした同級生は成功したのです。このとき、「神様はちゃんと見ているんやな」と思い知らされました。

「要領のよさ」だけでは成功できない

 もうひとつ、心に刻んでいることがあります。

 それは、私が大学時代に所属していたアメフト部の同級生に学んだことです。

 彼は、身体が小さく、走るのも速くなかったので、アメフト選手として身体能力に恵まれているとは言えませんでした。しかし、大学4年になるまでずっと補欠だったにもかかわらず、彼は、誰よりも熱心に練習をしていました。そして、コツコツと努力を続けた結果、大学4年の一番大切な試合でレギュラーに抜擢され、大活躍をしたのです。